第14話 スライムを放し飼いにしよう
「おはようございます、ヨウイチロウ様。お食事のご用意ができました。」
「おはようミユ。」
「昨日はお疲れのご様子でしたが、疲れは取れましたか?」
「うん、元気になったよ。朝食にしよう。」
「はい、では食堂でお待ちしております。」
昨日、あの後夕食と風呂を済ませて、俺は寝室に直行した。そして一晩寝て、今日はこうしてすっきりと目覚めた。とりあえず食事でもとりながら、ミユに今日の計画を聞いてもらおう。
「ミユ、君の作ってくれる料理はいつもおいしいね。卵焼きやスープ、ご飯まであるなんて異世界に来たとは思えないよ。」
「そうですか?ご満足いただけているようで幸いです。」
「今日は、まずスライムを地下の各階層に放し飼いにすることから始める」
「えっ、せっかく集めたスライムを放し飼いになさるんですか?せっかくラボまで用意したのに。」
「そうなんだ、全部じゃあないんだけど、このままじゃ手に負えない。プレーンスライムとシャインスライム、マジックスライム以外は一度、ダイロンの森と、農園、薬草園、多湿階層に放すことにした。」
「あの、ブラッディ―スライムをお預かりしてはいけませんか?彼らに肉の血抜きをさせてみたいんです。」
「お、それはありがたい提案だ。こっちとしてはブラッディ―はどこで血を手に入れさせたらいいか迷っていたところなんだよ。」
「では何匹ほどお借りできますか。」
「6匹全部頼むよ。」
「かしこまりました。」
「あと、第8階層は廃鉱置き場になっていたと思うんだが、あってるかな?」
「はい、マーリン様が鉱物を原料の状態でお取り寄せになって、精錬した残りかすを何かに使えるかもしれないとため続けて、一切使わなかった鉱滓が山のように放置してあります。」
「先代は物が捨てられない人だったのかな?」
「はい、何かに使えるだろうと何でもかんでもため込まれましたので、地下は第88階層までございます。」
「まあ、今回はそれがストーンスライムを放し飼いにするのに好都合だから。」
「ヨウイチロウ様もあまり、ゴミをためこまないようになさってくださいね。」
「はい。気を付けます。」
食事の後、さっそくスライムたちを各階層に放した。たぶん、問題は起きないと思うが、まずいことが起きないように定期的に見回るつもりではいる。
「マジックスライム、シャインスライムは屋敷のリビングにでも連れて行っておこう。あと、プレーンスライムは今まで通り、魔力水を与えておけばいいから、この子たちはラボに残しておくぞ。」
マジックスライムは核が虹色のぼんやりした光を放っているし、シャインスライムは神聖な感じの光を核から放っているから屋敷の生活空間にいてもちょっとした装飾品のように見えなくもない。
「シャインスライム、君はやっぱり日光の当たるところに行くんだね。聖水はこのガラスの器に入れておくから気が向いたときに吸収してね。」
シャインスライムは俺の言った言葉が理解できたかのようにもぞもぞと動いて、窓辺に移動していった。
「マジックスライム、君には魔石を上げたいところなんだが、しばらく待ってくれ。いろいろ片付いたら魔石を与えてやるからな。」
マジックスライムは不満そうにもぞもぞとしたが、こちらは机の上に上がってふてくされてしまった。まあ、早いとこ冒険者ギルドなりに行って魔石を入手できるようにしないとな。
「ヨウイチロウ様、魔石ですが、保管庫の中には世間的にかなり貴重な魔石も研究のために収集保管されております。ここは、魔の森から一度出て商人か冒険者からギルドを通じて入手されてはいかがでしょうか?」
「そうだね、ミユ、俺もそれを考えていたところだ。今日の午後に早速行くことは可能かな?」
「可能です。第9階層にワイバーンのミラーさんが住んでいますから、彼に乗せてもらえば1時間ほどで魔の森を抜けて、街道に沿って進みラガドの街にたどり着けます。そこでしたら、商人ギルドも冒険者ギルドもございますから、魔石は容易に入手できるでしょう。」
「なるほど、じゃあその提案に乗ることにしよう。ちょっと多めに資金を用意しておいてくれるかい?昼食をとったらさっそく出ることにする。」
「かしこまりました。ミラーさんはちょっと気難しいワイバーンですから、肉の塊のような手土産を持って行った方がスムーズに事を運べると思いますよ。」
「そうか、いろいろ気づかいしてくれてありがとう。俺は、部屋に戻って出かけるための装備を用意してくるから。」
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