第17話

 コウジたちはアテームの古代施設に帰還する途中、緊急通信を受け取った。


 内容は正体不明の敵に古代施設を強襲されているという非常事態だった。


「それで、敵の数と種類は? 状況は?」


 ジュエルの矢継ぎ早の応答に、向こうはしっかりと返事してきた。


「数は10機以上のミドルエグゾと3機以上のヘビーエグゾ、それに歩兵が50人以上です。まだ洞窟の入り口ですが、至急応援を!」


「分かった。すぐに行く。できるだけ敵を遅滞させて被害を減らせ」


 ジュエルはそこまで言うと、コウジたちと作戦会議を始めた。


「規模からみて相手はタマヨたちヨリトモの傭兵海賊でしょうね。基地の防衛は?」


「こちらは戦闘用のエグゾミドルが8機、グーマ族のミドルエグゾと合わせれば10機だ。相手のヘビーエグゾの数を考えると、圧倒的に戦力不足だ」


 ヘビーエグゾは前にも述べた通り、ミドルエグゾ約3機以上の戦力があると言っても過言ではない機体だ。あくまで目安だが、基地の防衛力に比べて2倍の戦力が攻めてきたと考えて良いだろう。


「古代施設に防衛装置はないのですか?」


「洞窟内にはないのう。外も基本的に惑星開発用の巨大装置しかないのじゃ。今の状況では使えんのう」


「くっ、こんな時に限って使えないですね」


「ぬっ! 何を!」


 コウジが苛立ちをユニにぶつけても、いい結果は返ってこない。それよりも今は思案のしどころだ。


「このドロップシップのミドルエグゾ4機を含めても戦力が足りない。何かいい策はないか?」


 その場の全員がこの危機的な状況に対する起死回生の案を考えていると、ユニが何でもないように言った。


「それこそ問題ない話ではないのかえ?」


「え?」


 皆がユニに注目した時、ある者は思い出したのだった。


 そう、こちらには新たな戦力が存在するのだと。


「全員、搭乗したな」


 その後、ドロップシップは大気圏外でいつでも突入できるよう配置され、来るべき時を待った。


 来るべき時とは、天からの轟雷だ。


「距離よし! 照準、誤差修正よし! 全砲門発射準備じゃ!」


 ユニは眼下の空を見ながら告げる。それは衛星基地の古代施設で接収した艦隊の操作による号令だ。


「撃つのじゃ!」


 ユニが腕を振りかざした途端、ドロップシップの横を掠めるように光と砲弾の隕石が降り注ぐ。


 降り注いだ大質量と大エネルギーはアテームの洞窟前にいた軍勢を一瞬で蒸発させてしまったのだ。


「どうじゃ。この通りあたいにかかれば艦隊など指先ひとつでちょちょいのちょいじゃ」


「やりますね。悔しいですが感心するしかありません」


 コウジはミドルエグゾのマテバの中で地上の様子をモニターに出す。モニター画面には洞窟前が黒ずんだ大地となり、元の形状が分からない焦げた物体が転んでいるばかりなのが分かった。


「よし! 降下開始!」


 しかしまだ洞窟内に敵は数機と何人かの歩兵がいる。敵は混乱しているだろうが、相手は元勇者と呼ばれたタマヨもいる。油断しないに越したことはない。


「行きますよ!」


 ドロップシップからアンカーを使いながら4機のミドルエグゾが降ろされる。コウジのマテバ、ハサンのキマリア、それと2機の長方体に手足が付いたようなミドルエグゾの『クロイ』だ。


 先行はコウジのマテバが行き、後ろから他の3機が追随した。


「――! 隠れろ!」


 洞窟に入る直前、コウジはマテバを洞窟の縁に隠す。すると後続にいたクロイの頭部に弾丸が貫通し、爆発しながら前に倒れた。


「くそっ。ポーチがコクピットごとやられた。助からない」


 ハサンがやられたクロノの操縦手の名前を叫びながら、自分の機体もコウジのマテバとは逆の壁に隠す。


「狙撃か?」


「ですね。機影は見えました。あれはヘビーエグゾの『クリムゲン』。タマヨの隊長機です」


 他にも2機のミドルエグゾとタマヨのクリムゲンとは違うヘビーエグゾが1機見えた。当初の数を考えれば大多数の敵を倒したものの、こいつらも厄介だ。


「こちらコウジ、古代施設の戦力はどのくらいですか?」


 コウジが問いかけると、返ってきたのは臨時で指揮しているイヴァの声だった。


「まったく、専門外のことをやらせおって! こっちは6機やられてもう動けるのは4機しかおらん。何かいい策はないか!」


「向こうが狙撃機体なら接近するしかありません。私に考えがあります」


 そう言うと、コウジは残りのミドルエグゾの味方に対して作戦を話すのであった。

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