第14話
システムが稼働した管制室でユニは衛星基地にある古代施設の状況を確認していた。
所々に配置されている監視カメラを覗いたところ、古代施設内には約30体のパラコープスに寄生された人間がいるのを確認できた。
「むむむ……、確かにこれなら施設を放棄した方が良いのじゃろうが……」
「艦船の方はどうだ? そちらにもいるなら場合によっては放棄するしかないぞ」
「そっちは大丈夫じゃよ。そもそも船内に入るためにはあたいがロック解除しなければ入れないわけじゃ。そこらへんは問題なしじゃ」
「それなら早くここを爆破して去りましょう。危険因子は早めに摘み取らないと」
「くっ、簡単に言ってくれるのう!」
ジュエルの予測は正しく、パラコープスは古代施設を爆破すれば一網打尽にできるタイミングにあるらしい。それでも、古代施設をひとつ失うというのはユニにとってひどい痛手だろう。
ただし爆破をするならば、それなりの準備も必要だ。
「爆破に十分な火薬か燃料はあるか?」
「……仕方ないのう。この古代施設にはあたいの古代施設と同じく巨大なリアクターエンジンが稼働しておる。それを臨界点まで出力を上げれば周囲10キロメートルは消し飛ぶじゃろう」
「かなりの威力だな。だがそれだけあれば十分だ。直ぐにでも起爆準備をしてくれ」
「簡単なことのように言うようじゃの! リアクターの安全装置は直接手動で外さねばならぬ。そこに行くまでたどり着けるのかえ?」
ユニはジュエルにそう言い、モニターに衛星基地の古代施設の全体図を開示する。
ついでに監視カメラにいるパラコープスの位置を連動させ、最適催促のルートを導き出してた。
「パラコープスは移動しないのですか?」
「いい質問じゃな。パラコープスに寄生された人間は活動時期以外は休眠状態に入るのじゃ。だから100年も前の死体が保存されて残っていたわけじゃ。まぁ、古代施設の空調管理のおかげもあるじゃろうがな」
「ふむ、となるとどれだけパラコープスを刺激しないかが通り抜けるのに重要なポイントのようですね」
コウジが話を飲み込むと、同じく理解したであろうジュエルが頷いた。
「分かった。これから班を2つにわける。ひとつはリアクターを爆破する部隊、もうひとつは怪我人を運んで撤退する部隊だ」
班わけはすぐに決まった。爆破部隊はコウジ、ユニ、ジュエル、モーダン。撤退部隊は重症のグーマ族の戦士やハサンを含む5人だ。
「任せますよ、ハサン」
「大丈夫だ。任せろ」
撤退の指揮はハサンに任せ、コウジたちはリアクタールームへと歩き出した。
通路は光が回復しているが、静寂が続いている。時折機械の唸る音が聞こえる以外は無音で、無人のようにも思えた。
しかし監視カメラの情報によれば、すぐそこの角にもパラコープスに寄生された死体がいるらしい。注意は怠れない。
「大きな音を立てれば致命的じゃよ。静かに進むのじゃ」
監視カメラの映像にアクセスできるユニを先頭に、4人は忍び足で道を進む。
途中、ユニがハンドシグナルで注意を促す以外は順調な行程でリアクタールームに近づいていった。
ただ、問題はリアクタールームの出入り口だった。
「この角がリアクタールームの出入り口じゃが、問題があるのう」
「ここまで来てなんです?」
「そっと向こう側を見るのじゃ」
ユニが指さす方向へコウジガ顔をはみ出すと、リアクタールームの出入り口が見えた。
だがリアクタールームの前にあろうことかパラコープスにとりつかれた死体がうずくまっている。これでは通り抜けられない。
「そのくらい簡単だろう」
同じく顔を出して視線を向けていたモーダンが、ふいに拳銃から弾倉を取り出すと、それを宙に放る。
投げられた弾倉は放物線を描き、コウジたちがいる側と逆の通路でガツッと音を立てて落下した。
するとパラコープスの死体は音に反応し、別の通路へ誘われるように歩いて行ってしまった。
「な?」
「や、やりますね」
頭の回転の速いモーダンに感心しつつも、一同は素早くリアクタールームへと侵入した。
部屋の中は倉庫と言えるほど大きく、真ん中に鎮座しているのは巨大なコイル状のリアクターだった。中心部は青白く光り、透明な絶縁体に包まれている。
「リアクターの手動停止はあの赤いレバーじゃ」
ユニがそういうように、リアクター前のコンソールにはお目当ての物があった。
「よしっ、では作戦を――」
――ガッチャン
コウジが3人で集まって話し合おうと集まった時、残りのひとりが見当たらない。どこかと探していると、急に嫌な音がした。
全員がそちらに目を向けると、そこにはレバーを引いたジュエルが立っていた。
「ん? 目的は達したぞ」
その途端、リアクターは赤く染まり、施設全体へと響き渡るアラート音を発した。もちろんそれはパラコープスたちを目覚めさせるに十分な音量だった。
「……忘れてました。船長は即断即決のせいか迂闊なんですよ」
「そういうのは早めに注意するもんじゃろ!」
コウジとてジュエルを問い詰めたい気持ちはやまやまだが、すぐにでも大勢の気配が集まるのを感じ、戦闘態勢へ移行するのだった。
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