第11話
古代施設に到達したスケイルの生存者とグーマ族はユニの元で様々な作業に入り始めた。
どうやらユニとて全ての施設をオートで使用できるわけではなく、ハードの面、資材の運搬や各種備品の整理は人間の手を借りざるを得なかったようだ。
また、年月による劣化は精密機械の故障も起こり、エンジニアは古代施設の修理に勤(いそ)しんでいた。
コウジといえば、会議室でジュエルとモーダン、それにハサンと共に次の作戦を練っている最中だった。
「具体的にはティンクルイーターをどのように討伐するのですか?」
「ご存じじゃと思うが、ティンクルイーターはコア付近の地中深く数千メートルの地下におる。討伐する戦力だけではなく、これを引きずり出す必要もあるのじゃ」
ユニの言葉に皆は「ふむ」と頷いた。
「それで方法は?」
「いくつかある。じゃが今最も効果的なのは音波による攻撃じゃな」
「音波?」
「そうじゃ、ティンクルイーターには苦手とする音が存在する。それは自分も超音波で周囲を索敵するからじゃな。その特性を活かして地中から引きずり出すのじゃ」
「音波装置はどうするのですか?」
「いま部品を製造中じゃ。規模はかなり大きいので時間はかかるじゃろうがな」
「具体的には?」
「皆の頑張り次第じゃが……1か月くらいかのう」
ユニの憶測が正しいのならば、作戦実行はかなりギリギリである。なぜなら星の寿命が3ヶ月とはいえ、地表での生存圏へ与える影響はもっと早いはずだからだ。
コウジの予想が正しければ、自分たちが生きられるのは1か月半、長くて2か月くらいだろう。
「となると問題は戦力の方だ」
そう話を切り出したのはジュエルだ。
「スケイルから回収できた戦力は修理用のライトエグゾ4機、戦闘用のミドルエグゾが2機だ。それだけではとてもティンクルイーターには敵わない」
「その点は心配無用じゃ、グーマ族の戦力と古代エグゾスレイヴの採掘、そしてあたいにもアテがあるのじゃよ」
ユニはバッチコンとばかりにウィンクをして返事をした。
「グーマ族の戦力はミドルエグゾ12機、ヘビーエグゾ3機。これでも足りない」
ハサンはユニの返答に対し、自分の手札を公開した。
補足しておくと、ヘビーエグゾとは小さいほうから順に、ライト、ミドル、ヘビー、エクステンド、の大きさになる機体だ。
全長は約20メートル、重さ約90トン、縦幅約6メートル、横幅約10~15メートル、装甲厚もミドルのおよそ10倍の強度があり丈夫だ。
戦力としてはミドルエグゾ3機に相当するヘビーエグゾは、正規軍の戦闘で前線を支える重要な機体といえた。
だがそれでも、ティンクルイーターの強さを越えるに至らない。
「ユニ、他の戦力にアテがあると言いましたね。もったいぶらずに教えてください」
コウジがユニを急かすと、ユニは「まぁまぁ」と宥(なだ)めるような穏やかな口調で話し始めた。
「実はな。この星の衛星軌道上には1個艦隊規模の戦闘艦が配備されていてのう。それがまだ使えるはずなのじゃ」
「!? それはすごいじゃないですか」
「ただ、問題があってのう」
ユニは少し顔を曇らせて、その続きを話し始めた。
「ロック解除後から通信が回復して衛星軌道上の基地とのリンクを繋ごうと思ったのじゃが……繋がらなくての。リンクが回復せねば艦隊を動かすことができんのじゃ」
「……つまり?」
「直接衛星基地に乗り込んで通信の復旧をするしかないのう」
それなら話は早い。衛星軌道上ならスケイルのドロップシップでも大気圏脱出と侵入はできる。そうしてコウジたちが基地へ乗り込んで通信装置を修理すれば解決だ。
「分かった。ならばこちらからはドロップシップを1機貸そう。メンバーは私とモーダン、コウジ、そしてスケイルの戦闘要員、グーマ族からも何人か援軍を出してもらいたい」
「分かった。ここにいるグーマ族、全員戦士。皆で行こう」
ジュエルがハサンに顔を向けると、向こうはすぐに承諾してくれた。
「エンジニアはいらぬ。通信はこのあたいが回復させよう。それならば危険も少ないじゃろうて」
「危険ですか?」
「おそらくだが、通信装置は誰かの仕業で壊れた可能性があるのじゃよ」
「ええ!?」
今回の任務は楽なものと考えていたがどうやらそうでもないらしい。
ユニのそんな忠告に、その場の全員が先行きの不安を感じて緊張するのであった。
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