第七話 無言の中の彼ノ気持ち

 恋人、宏之君が私の所に顔を見せなくなったその日から藤原君が毎日、顔を見せ始めていた。理由を聞いても答えてくれない。・・・、違うわね、聞きたくても聞けないのよね、私がこんな状態だから。藤原君はほとんど言葉を掛ける事なく優しく目を細めジーッと私を見ているだけ。

 たまに彼が言葉を発すれば彼の表情が酷く辛そうになっていた。

 今日も彼は独り言のように何かを私に伝えようとしていたの。

「俺はどうやって涼崎さんに・・・・・・、すればいい?どうすれば・・・・・・・・、れる?フッ、今の君にこんな事を言ってもし方がない。バカだな、俺」

 言葉を終わらせると藤原君はそう自嘲気味になるだけ。どうして、彼はそんな言葉を私にかけるのでしょうか?


*   *   *


 暫く月日が流れ、藤原君が辛そうな言葉を出さないようになった時、一度だけ次のように私に話しかけていたの。

「涼崎さん、オマエは何故、目覚めない・・・、」

 藤原君はその言葉の後に、とても悲しい事を口にしたの。

「オマエに俺の命をくれてやったら目を覚ますのか?それでお前が目を覚ますならくれてやる・・・。あるわけないよな・・・・・・、そんな事で目を覚ますぐらいならとっくの昔に実行している」

 彼は何故そこまで自己犠牲になれるのか私は知らなかった。

 若しかしたら、彼自身もどうしてそこまで思い詰めてしまうのか判っていないのかも知れない。

 でもね、それだけは実行して欲しくなかった。

 だって、詩織ちゃんや、香澄ちゃんだって、妹の翠だって、みんな、皆、藤原君を知っている人達が悲しむもの・・・、私だって、其れは同じ。

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