第16話
そうなるとあれほどまでに知りたがっていたあの事件の犯人の正体。
それがわかったのだ。
こんな思いもよらない形で解明するとは。
意外過ぎる。
それにしても首だけの化け物なんて。
首だけ……。
そこで野上は、はっとした。
諸星がびっくりするほどに勢いよく立ち上がり、諸星に言った。
「少し待っていてくださいね」
野上は応接室の奥にある自分の部屋に入り、そして出てきた。
手にはアルバムがあった。
野上がアルバムを広げて言った。
「その首だけの女の人とは、この人のことではないですか」
諸星は心底驚いた。
三人の女性が写っている写真。
その左にいる少し笑っている女は、顔色や表情こそまるで違うが、その顔はまさにあの時に見た化け物の顔だったのである。
そしてその横、三人の真ん中に、今目の前にいる野上が写っていた。
「そうです。この人です。間違いありません。お知合いですか?」
「ええ、私も十分すぎるくらい驚きました。まさか連続殺人犯が、さあやだったなんて」
「さあやという人ですか」
「磯崎さあや。霊能者。私のかつての仲間です」
野上は諸星をじっと見ながら言った。
「あなたには説明する必要がありますね。わざわざここまで来てもらいましたし。とても大事なことがあなたのおかげでわかりました。あなたには何があったか知る権利があります」
「ぜひ教えてください」
野上は一息つくと言った。
「私もさあやもまだ若いですが、十年近く霊能者をやってまいす。同じ霊能者で家も年も近い。知り合いにならないほうが不思議なくらいです。知り合いというより、かなり親しい関係だったのですが」
「そうですか」
「この事件をよく知ってもらうために、あなたには説明しないといけないことがあります」
「なんですか」
「霊能者についてです」
「霊能者についてですか」
「そうです。霊能者には仏教派、神道派、その他の三つがあります。私もさあやも仏教派です。そして霊能者には魂の霊能者と肉体の霊能者がいます」
「魂と肉体ですか」
「そうです。人間は魂と肉体が重なって生きています。この魂の霊的エネルギーを使うのが魂の霊能力者です。ほどんどの霊能者はそうです。そして肉体の生命エネルギーを使うのが、肉体の霊能者です。かなり珍しいタイプですが、さあやはそうでした」
「そうですか」
野上はお茶を一口飲み、続けた。
「持って生まれた資質でそうなるんです。でも肉体の霊能者には欠点がありました。さあやもそうでしたが」
「欠点。それはなんですか」
「魂の霊能者は死んでもすぐにその力がなくなったりはしないんですが、肉体の霊能者は、死ぬとすぐにその力の大半を失ってしないます。おまけにさあやは極めて特殊な方法で除霊をしていましたし」
「特殊な除霊ですか」
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