第11話

送り迎えも忙しいと拒否されてしまった。

それでも少女は抗議をやめなかった。

本当に怖かったのだ。

命の危険を感じていた。

すると母親は「うるさいわね。ほんとしつこい。同じことを何回も何回も。なんどしつこく言ってきても無駄よ。ほんとしつこい。しつこいって言ってるのよ」としつこいを連発した。

結局何の進展もなかった。

おまけにしつこいだって。

しつこいのはどっちだ。

同じことを何度も何度も言わせてるのはそっちだろう。

何回言っても聞かないくせに。

父も母も、私が心配ではないのだろうか。

たった一人の娘なのに。

まだ十四歳なのに。

両親に対する大きな不信感を抱えたまま、少女は学習塾へと出かけた。

こんな怖い思いは二度としたくないと思いながら。


その日の授業は終わった。

次々と親が迎えに来て、生徒の数がどんどん少なくなっていく。

そんな中、一人で帰る。

「一人だけど大丈夫?」 

塾の先生と顔見知りになった生徒の親に聞かれた。

少女は嘘を言った。

「大丈夫です。次からしばらく来ないから」

まったくの他人が本気で心配しているというのに、ほんと、うちの親ときたら。

そういえば。

少女は思った。

両親の特徴は、父親は完全に無関心で、母親は自分の言うことを全く聞かずにすべて否定する。

たとえそれが私に明らかに不利益なものであっても。

過去にそれによって私がなんだかの被害を受けたことが何回かあるが、母親はまるで変わらない。

自分の非はなにがなんでも認めない。

反省はしない。

そしていったん口にしたことは、なにがあっても変わることはない。

おまけに同じ間違いを飽きることなく繰り返すくせに、自分から進んで自分に都合の悪い過去を何度も蒸し返してくる。

そしてそれに文句を言うと「昔のことを蒸し返すな。終わったことを。しつこいわよ。しつこい」と言うのだ。

蒸し返したのはおまえだろう。

おまけに終わってはいない。

現在進行形でずっと続いていることなのだから。

これはネットで言うところの毒親と言うやつではないか。

少女は家族間のトラブルを取り上げているようなユーチューブチャンネルと、時たま見ることがあった。

それとなんだか似ている。

そんなことをいくら考えても、やはり一人で帰らなければならない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る