第12話
心の底から嘆きながら、少女は学習塾を後にした。
学習塾の近くは少しだが人通りがある。
それが逆に怖い。
すれちがう人がみんな首切り殺人犯に見えてくるからだ。
そして家に近づくと、別の恐怖が待ち受けている。
道に誰もいないからだ。
人が周りにいない。
そこに殺人犯が現れて自分と犯人の二人きりとなったら、殺人犯には好都合だろう。
目撃者がいないのだから。
少女は自然と小走りになった。
――もう少し。家までもう少し。
突然、少女は止まった。
いきなりすぐ目の前に何かが現れたからだ。
――えっ?
女だった。
首しか見えなかったが、それは見間違いだと思った。
しかししばらく見て、やはり首しかないことに少女は気づいた。
野上はまた感じた。
――野上ちか、集中よ。集中。
野上は全神経を集中させた。
体が震え、暑くないのに汗ばむほどに。
野上はそれこそ必死だった。
相手を少しでも多く感じ取ろうと。
――?
その時、今までとは違う何かを感じた。
ほんの少しの善。
それは前から感じ取っていたのだが、その小さな善がなんだか自分が知っているように思えてきたのだ。
――これは、いったい?
野上はその小さな善に集中した。
そして神経をとがらせ時間をかけて探ったが、それ以上は何もわからなかった。
野上は考えた。
なぜ自分が小さな善を知っていると感じ取ったのか。
考えたがなにも思い浮かばなかった。
同時に何か大切なことを見落としているような、忘れているような気もしたが、それが何なのかはいくら考えてもわからなかった。
もう勘弁してくれ。
刑事は思った。
日本犯罪史上類のない猟奇殺人事件。
それが四件目だ。
おまけに一人目は中年男性で二人目は中年女性だったのだが、三人目は男子高校生で四人目はなんと女子中学生だ。
これははっきり言ってまずいことになる。
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