第9話
もはや小さな染み程度のものしか残っていない。
今回もわからなかった。
野上にわかることは、また誰かの首なし死体が見つかるとだろういうことだけだ。
――このままでは何の進展もないわ。
野上は考えた。
どうするべきかと。
しかしいくら考えても、なにも浮かんでは来なかった。
諸星は警察に行くことになった。
第一発見者として。
もちろん諸星は死体の第一発見者ではない。
犯人を見、少年が殺されるところも見たのだから。
もしこれが犯人が普通の人間であれば、諸星は喜んで捜査に協力し、見たことを全て伝えただろう。
しかし見たものがあまりにも普通ではない。
女の首だけが宙にあり、その首が二つに分かれるのではないこと思うほどに大きく口を開けて、その口がさらに広がって少年の頭を喰ったのだ。
そしていなくなった。
諸星の頭は混乱していたが、そんなことを警察に話したらいったいどうなるか考えられるほどの理性は残っていた。
正確に細かいところまではわからないが、とにかくとんでもないことになるだろうということは予想がついた。
諸星はパトカーの中で考えて、今見たことは話すまいと決めた。
そして改めて刑事に聞かれたとき、帰宅していると首のない少年を見つけて叫んだ、と答えた。
犯人とか怪しげな人物は見ていないとも。
刑事はなんだか怪訝そうな顔をしたので?がばれたかと思ったが、それ以上は何も聞いてこなかった。
諸星はすぐさま解放され、パトカーで自宅まで送ってもらった。
これで三人目の犠牲者だ。
しかも前の二人と同じ首なし死体。
もう勘弁してくれ。
犯人の目星はいまだに立っていない。
全くと言っていいほど。
三人目だからと言って新たな証拠や物証はなにも見つかっていない。
検死官の検死報告も判で押したように同じだ。
早く犯人を見つけて逮捕しないと、世間が大騒ぎだというのに。
それに刑事には一つ気になることがあった。
死体の第一発見者だという諸星明美と言う女。
話を聞いたところ、その内容におかしなところはなにもない。
ただその態度その雰囲気に、少しだけだが違和感を覚えた。
何を感じたかと言えば説明に困るが、なんだか嘘を言っているような、なにか大事なことを隠しているような。
そういった印象をおぼろげながら感じたのだ。
あくまでもおぼろげながらだが。
そうかと言って証言の内容にあやしいところは一つもない。
ましてやこの小柄な女性が犯人だとはとても思えないし、殺人を犯すような人間にも全く見えなかった。
むしろ逆なタイプに見えた。
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