第2話
死体が見つかった。
四十代男性。
発見されたのはその男の家のすぐ近くだ。
帰宅途中で、そう少しで家に着くというところで死んだのだ。
発見したのは近所の主婦。
この主婦がとびっきりの悲鳴を上げたために、近所中から人が集まった。
主婦は腰を抜かしてぶるぶる震えていたために、あとから来た男性が警察に連絡した。
まだ若い主婦が腰を抜かすのも無理はない。
なにせ血の海と化したそこに倒れていた死体は、首から上がなかったからだ。
猟奇殺人も猟奇殺人。
世間が注目する中、警察の捜査は難航した。
発見されたのは誰でも自由に行き行きできる路上。
その中から犯人だけの何かを見つけるのは難しい。
しかも路上で人の首を切って持ち去るという行為。
人間の首なんてそう簡単に切れるものではない。
ところが犯人は路上でそれをやってのけたのだ。
どこかで首を切って死体をここに持ってきたという痕跡は一切ない。
というか犯行につながるようなものは、全く見つからなかったのだが。
そして検視官の検死報告が、担当刑事をさらに悩ませた。
首はサメかそれに類似する何かによって食いちぎられたかのようだ、との報告だったからだ。
もちろん日本の路上にサメなんて存在するはずもない。
そういう道具を使ったと見るのが正しいが、わざわざそんなことをする意味が分からない。
おまけに夜だということもあり、目撃者は皆無だ。
そもそも昼間でもそんない人通りはないのだが。
近所の人も、悲鳴や争うような声、その他なんだかの音を聞いたという人は一人もいなかった。
犯人はこれほどのことを、静かに素早くやってのけたのだ。
これほどまでに世間を騒がしている事件。
そう簡単に迷宮入りにさせるわけにはいかない。
刑事は心底困っていた。
何かを感じた。
なにかはよくわからないが、わからないなにかが突然この世にあらわれた。
そんな感じだ。
――何なのかしら。
野上ちかは集中した。
正体はわかないがその力は大きい。
無視できないほどに。
そして意識を集中させて探っているうちに、少しだけ見えてきた。
それはまごうことなき邪悪なるもの。
しかしその中に、邪悪とは正反対のものが宿っている。
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