第4話
『茶露』が詩を投稿すると、
『ちゃとら』が曲をつけて動画をアップする。
そんなやりとりがしばらく続いた。
曲をつけるのが、早い。即興というやつだろうか?
私は楽器ができないからわからないけど。
『ちゃとら』の上手すぎないギターと歌は、とてもちょうどよかった。
でも、そんなことを言うのは失礼だと思うので言わない。
直接は他人行儀な挨拶くらいしか交わしていないけど、
無意識に口元がゆるんで、どうにも変な顔になってしまう。
「嬉しい」ってきっと、こういうことなんだろう。
私は携帯電話を閉じた。
教室の中では猫也の身長が夏の間にぐんと伸びた。ということが話題になっているのが聞こえてきた。
(これ以上、大きくならないで欲しいな…。)
私の詩はほとんど猫也をネタにしている。
猫也ネタなら、いくらでも書ける自信があった。
むしろ、この未知の感情を整理するために書くことが必要だった。
毎日詩ばかり書いて過ごしていた。
ここまで認めずに来たけど、
「好き」ってきっと、こういうことなんだろう。
彼女になりたいとか、付き合いたいとかそういうことじゃないのだけど、
それでもただ、「好き」と伝えなければならないような気がしていた。
気が付けば夏は終わりのムードを漂わせていた。
学校終わり、下校の時間
私は帰り道と反対方向の、そう遠くない距離に後ろ姿を見つけた。
傾きかけた太陽に照らされて景色はオレンジ色に染まっていた。
猫也は歩きではなく自転車だったので、
私は走って追いかけると、猫也の自転車のハンドルをがっしりと捕まえた。
猫也は驚いて自転車から降りた。
「…なに?」
「あのね…」
全力で走ったのと緊張で
ゼーハー呼吸する私。
「………」
私が自転車のハンドルを強く握るので
猫也は逃げられない。
「なに」
「あのね…」
「………」
「………」
「………」
「………」
「早く言って」
「……!!」
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