最終章 火星も地球も太陽系の家族①

 嬉しさは頭から完全に消し飛んだ。ガニメデやカリストに立ち寄り、恵美への土産品を探すことはできなくなった。俺たちは重い足取りで、木星を離れた。


 これから急いで火星に戻らなければならないのだ。だが火星の地に降り立つことはないだろう。娘と孫とは、もう二度と会えないかもしれない。その悲痛な心が頭に押し寄せていた。俺は虚ろな眼で、コックピットの窓の外に広がるミルキーウェイを見つめた。


 あまりにも残酷な運命を呪った。


……ああ、娘の手料理ももう一度、食べたいなあ。


 胸が詰まりそうな俺の心は、先に火星へ飛んでいた。

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