第81章 不死鳥のごとく⑪

「ゲバラ、火星から連絡がきた」

 部下の1人が報告してきた。


「わかった。つないでくれ」

 通信を引き継いだゲバラの顔が険しい顔になっていた。


「彗星の到達が、予想よりも早くなりそうです」

 通話を終えたゲバラが曇った顔で答えてきた。


「ガーピスの計算は違っていたということか?」

 予想もしなかった意外な言葉に、俺は少し不満の眼を開いて訊き返した。


 なぜなら、彗星衝突の回避に失敗すれば、娘の命が。火星の人々が全滅することになるからだ。ガーピスはある意味、生きた万能の神だと思っていたが、どうやら勘違いだったようだ。


「ガーピスがいくら最高頭脳の持ち主でも、宇宙の彼方にある彗星の動きを100%予測することは不可能です」

 俺の心を読み取ったのか、ゲバラが弁明するように吐いてきた。


「それで、彗星が火星に衝突するのはいつだ?」

 ゲバラの眼をまっすぐ見て訊ねた。


「予想よりも1日早いです」

 曇ったような顔をして答えてきた。


「なんだ1日か、それなら、問題ないだろう」

 俺は逆に安心した顔を浮かべた。


「いえ、当初の発射計画を見直す必要があるわ」

 回復したアリーナが、代わりに答えてきた。


 どうやら二人の表情と話しぶりからして、ゾルダーたちに時間を潰されたことが、俺が思っていた以上に深刻のようだった。 




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る