第81章 不死鳥のごとく③

 アリーナの美しい顔は、木炭のように青黒くなっていた。見方によっては、数日経った死体のようにも見える姿になっていた。


 俺は、変わり果てたその姿を眼にして、息をするのも忘れていた。


「し、死んで、いるのか?」

 眼を閉じたアリーナの顔に瞳を注いだまま訊いた。


「人間なら死んでいますが……」

 ゲバラが沈んだ声で説明してきた。


「どうして? こ、こんな姿に?」

 声をどうにか絞り出して訊き返した。


「彼女は、自分の熱で、あなたを守ろうとしたのです」

 ゲバラは沈痛な声で答えてきた。


「アリーナ! 眼を、眼を覚ましてくれ。お、俺には、いや、火星には、おまえが必要だ」

  彼女の状態は深刻だった。俺は、アリーナの傍に腰を落として両手を合わせ、生き返ることを必死に祈り続けた。


「全て、手は尽くしましたが……」

 続きの言葉をゲバラは言わなかった。


 ゲバラが続けて何を言おうとしたのかを、すぐに理解した。それを耳にした俺の心と体は、ガタガタと崩れてしまいそうだった。

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