第53章 火星の癌①

 アジトに戻ったホラップは、椅子を蹴飛ばした。


「あの、宮島という男。あいつを消せ」

 手下に血走った眼を向け、怒鳴るように命令した。


「宮島を始末したら、あいつらの計画も必ずぶっ潰す。ガイガーは俺たちの地球への帰還を保障してくれた」

 ホラップは手下たちの顔に眼をやり、声を荒げた。


「ボス。本当に俺たちの、地球への帰還の保障をガイガーはしたのですか?」

 すぐ前に立っている男が訊いてきた。


「ああ、確かだ。それと地球に戻ったら、生き残っている人間たちを、この俺たちが支配することも約束した」

 訊いてきた男と、周りの手下に眼をやりなが吠えた。


「ガイガーの野郎は太陽系最大の天体ショーを、絶対に邪魔させないということだ。火星にいる人間は、そのモルモットというわけだ」

 室内の壁に貼られた火星の地図に眼を向けた。


「ガイガーは強欲な連中がつくった大悪魔だ。強欲さもそっくりだ。いや、それ以上だ。まったく悪趣味な奴だぜ」

 並んで貼られている地球の画像に眼を移した。


「宮島の野郎を始末したら、あの一緒にきた女を手に入れる。色んな女を弄んできたが、あんな絶世の美女、初めて見た。この俺様の女にする」

 眼を手下たちの顔に戻すと、卑猥な顔になった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る