第39章 アリーナ誕生②

 呼び名なんて、どうでもいい話を終えた俺とジュンは、施術台でまだ昼寝をしている、いや眼を閉じ横たわっているアマールの前にやってきた。


 新しく生まれ変わった、アマールの姿を眼にして驚いた。美しい金髪は黒髪に代わり、顔も以前より柔和になったように見える。人間の若い女に混ざってもヒューマノイドとは誰も気づかないだろう。ただし、その美しさは飛びぬけているが。


「彼女はもうアマールではありません。新しい名前は、アリーナです」

 ガーピスの言葉を思い出した。


 そうだ。目の前の女は、もうアマールではないのだ。アリーナという名前の女だ。その名前で思い出した。フィギュアスケートのオリンピックの金メダリストと、同じ名前だ。そのゴールドメダリストも絶世の美少女だった。金髪が黒髪になったことで、どこか似ているようにも見える。


「この女、生きていたのか!」

 ジュンが怒声を上げると、レーザー銃を腰から取り出し、アマールに、いやアリーナに銃口を向けた。


「ジュン! やめろ!」

 俺は銃口を遮るように、ジュンの前に立ちはだかった。


「宮島さん、いや、ジーヤ、そこをどいてください! この女はガイガーの手下です! 生かしていたら、人間がどんな目に遭うか」

 いっそう強い口調で声を飛ばし、いまにも引き金を引きそうに構えていた。


「俺は彼女に助けられた。撃つなら、俺を先に撃て!」

 俺は両手を広げ、声を張り上げた。


 その言葉が彼女に聞こえたのか? アリーナの目尻が少し濡れていたことに、ジュンを制止していたことで、俺は気付かなかった。


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