第37章 俺が眠る2年前②
ビクトリアは新体操でオリンピック出場を目指していた。だが、長引く内戦が彼女の夢を奪った。奪ったのは、それだけではない。
ビクトリアの家族はシリアのイドリブ県に暮らしていた。一家は、戦禍を逃れてトルコ経由でドイツへの入国を目指していた。幾多の苦難を乗り越えて、どうにかハンガリーに命からがら辿り着いたときだった。排斥主義の極右グループに襲われて、家族の全財産を奪われてしまった。さらに途方に暮れる家族に追い打ちをかけるように、地元の二人の男にビクトリアが誘拐された。その誘拐した二人から、ビクトリアを取り返したのが、日本のAV男たちだった。AV男たちは二人に身代金を払い、ビクトリアを引き取った。だがそれは、誘拐した男たちとAV男たちのサル芝居だった。誘拐されたという恐怖に怯えたビクトリアに恩を着せるには十分な芝居だった。誘拐犯から助けてくれた日本人たちは、やはり日本という国の人々は親切だ、と思い込んだ彼女をAV男たちが攻略するのは簡単だった。
AV男たちが本性を現したときには、もう彼女に逃げる術などなかった。肉体は立派な女性でも、ビクトリアはまだ17歳の少女だ。AV男たちは上辺の優しさと脅迫の硬軟を織り交ぜた攻撃で、彼女の心を執拗に追い詰め、屈服させてAV撮影に応じさせた。
だが撮影内容は、彼女が渋々応じたものではなかった。普通の男女の交わりの撮影だと思ったのが、3人がかりでやりたい放題に体を貪られた。その凌辱からようやく解放されたビクトリアは、わずかな紙幣を渡された。
ビクトリアは手渡された紙幣を投げ返そうと思ったが、屈辱に耐えて受け取ると、家族の元に帰った。
どうにか家族の元に戻ったビクトリアは、何も言わず母に金を渡すと、近くの林で首を吊り自殺した。
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