第36章 アマール②

 ジュンは動揺したままだった。無理もない。火星には、母親がいるのだ。


「俺は火星にいる人々を救うために、火星に行く。おまえの母さんも助けるためだ」

 強い口調で伝えた。


「僕も、火星に行きたい。母さんを助けに行きたい」

 ジュンがすがるような口調で声を返してきた。


「ああ、もちろん、おまえも連れていく」

 その発言待っていたという言葉をしまい込み、ジュンの背後でひどく驚いた顔で立っているマリアに眼をやった。


「わたしも、連れていってください。お願いします」

 声と一緒に、眼でも訴えてきた。


「わかった。ただし、命の保障はできないぞ。それでもいいなら、連れていくが」


「はい、わかっています。ジュンがいない地球には、未練はありません。わたしの家族は全員、みんな殺されました。一緒に連れて行ってください。お願いします」

 マリアが哀切な口調で、自分の思いを伝えてきた。


「よしそれなら決まりだ。宇宙船の乗員は、操縦するパイロットと合わせて4名だ」

 説明を終えると、操縦者を誰にするのか? 頭を切り替えた。


 やはり、最適任者はゲバラだ。彼が火星に行けば、娘も喜ぶだろう。だがゲバラは本部にいつ来るかはわからない。ゲバラは、いつも単独で行動をしている。


 ゲバラに代わる相手は? やはり、彼女以外は、考えられない。

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