第27章 俺の息子④

 竜司の説明に続いて、スクリーンには、ミイラのように痩せ細り、飢餓で死んでいった老若男女と、幼い子供たち、乳幼児も、何万、何十万の人々の無残な様子が映し出されていた。そして世界中で食料を求める大規模なデモの模様が映し出され、そのデモの中には少年少女たちもいた。それを容赦なく弾圧する警察と軍隊が映っていた。それでも民衆はいくら激しい弾圧を受け続けても、むしろデモ抗議の輪は膨らむ一方で、全ての国が内戦状態化していった。


 当初は、圧倒的な武力を擁する政府軍に人々は圧倒されていたが、民衆の圧倒的な数の力で、だんだんと政府を追い詰めるようになっていった。形勢が変わった理由の一つには、鎮圧に加わっていた兵士たちが民衆に味方するようになったことだ。


 だが、民衆の勢いは長くは続かなった。AIのロボット部隊が弾圧に乗り出すと、戦況は一変した。ロボットは人間の兵士とは違って、幼い子供、幼児であっても容赦なく全員殺害した。そのロボットを使った政府の無差別殺害に嫌気して、ついには全兵士が民衆の側について、ロボット軍と戦うようになっていった。


 これで、形勢は再逆転するかと思われた。だがロボット軍が反転攻勢を始めると、民衆の武力組織と反政府軍の連合軍は次々と駆逐されていった。それでも民衆の政府への攻撃が収まることはなかった。


 世界は、完全に壊れていた。そんな狂った人間の世界を、冷ややかな眼で見ているものたちがいた。


 アメリカ、中国、両勢力が完成させた、完全自立のAIたちだ。

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