第25章 救出④

 ガスマスク男がナイフを手にすると大蛇に飛びかかった。だが大蛇の反撃にあい、左の上腕を咬まれた。巨大な牙が腕を、いや咬みついただけだった。両上腕は鋼鉄のような装備で守られていて、牙は1ミリも腕に刺さらなかった。男はナイフを大蛇の頭にグサッと突き刺した。大蛇はなおも反撃しようとしたが、さらに頭をずたずたに刺されると胴体をくねらせるだけで虫の息となった。

 それを眼にしたジュンは、すぐさま女に駆け寄った。


「マリア、大丈夫か?」

 ジュンはひどく心配した顔で声をかけながら、怪我が無いか確かめるように眼をやっていた。


「大丈夫よ。どこも怪我はないわ」

 マリアが気丈な声を返していた。


「二人とも大丈夫か?」

 ガスマスク男がナイフを抜き取り、被りを外した。


「ゲバラ、あんただったのか。助けてくれて、ありがとう」

 ジュンが驚いたような口調で声を上げ、マスクを外した。


「うっ、この臭いは?」

 マスクを外したことで、衣服にこびり付いている臭いにたまらず、ジュンは思わず息を止めた。


「スカンクの分泌物だ。あいつらライオンも、この臭いには勝てない。むやみに殺すわけにはいかないからな。だからこの香ばしい臭いで撃退したというわけだ。さあ、急ぐぞ。お前たちが喰われていないとわかれば、奴らはすぐに探しにやって来る」


 早口で説明をしたゲバラはナイフを腰に仕舞うと、消臭スプレーを取り出して二人の体にふりかけると、自分にも入念にふりかけていた。


「ジュン、これを使え。さ、行くぞ」

 ジュンに渡したのは、高性能のレーザー銃だった。


 また走り出したゲバラたちは、ジャングルに囲まれた池の前に立った。逃げられないと観念して、3人による入水自殺? いや、池の底を確かめるように立っていた。





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