第25章 救出②

 2頭のライオンが飛びかかる直前、カストロの部下が先に発砲した。二人が撃ったのは即効果がある強力な麻酔弾だ。飛びかかろうとした2頭のライオンは飛びかかる寸前に、バタッと死んだように倒れた。それを眼にした他のライオンたちはひるんで、後ろに後退した。


「まずい! なぜか? 俺たちの行動を読まれている。みんな離れろ!」

 カストロが叫んだ。


 その声の直後だった。ドドーン! ドドーン! という激しい爆発音が耳をつんざき、カストロたちの周りの大地の欠片が激しく飛び散った。逃げ遅れた1人が、爆発の餌食となり無残な姿になった。間を置かずに、次々とミサイル弾が飛んできた。カストロたちがいた場所は、爆発煙で見えない状態になった。


 一方、爆発音に驚いて狩りを中断したライオンたちの隙をついて、ジュンたちは近くに生えているアカシアの灌木を背にしていた。鋭いアカシアの棘が背後からの攻撃を防いでくれるが、それでも喰われるのは時間の問題だ。攻撃態勢に戻った1頭のメスライオンが襲ってきた。ジュンは枝を必死に振り回し、攻撃をどうにか防いだ。すると、もう1頭も飛びかかろうとしてきた。喰われると思ったその時、2頭のライオンはいきなり尻もちをついた。そして踵を返し後方に退いた。


 ジュンたちはライオンたちの背後に眼をやった。ガスマスクを被った男が、カウボーイのように鞭を振り回し、ライオンたちを追い払おうとしていた。ライオンたちは鞭攻撃に驚いて後退したが、今度は鞭を振るう男に襲い掛かろうとしていた。


 ビシン! ビシン! 鞭の音がうなった。ライオンたちの攻撃よりも先に男の鞭が早かった。だが男がいくら鞭の達人といえども、ライオンの数が多すぎる。3頭が、ジュンたちのほうに狙いを変えてきた。

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