第25章 救出①

 ゴーグルをかけ、全身を迷彩色に包んだ屈強な男が8人、低い雑木林に覆われた小高い丘から眼下に広がる草原の一点を見ていた。ここから直線距離にして約300メートル。そこには13頭のライオンの群れがいた。ライオンたちから少し離れた先には、若い男と女がいた。二人は木の枝を手に持ち、ライオンたちの襲撃に備えていた。だが木の枝では13頭のライオンの攻撃を防ぐことなど不可能だ。二人とも喰われるのは時間の問題だ。


 ライオンたちが狩りの姿勢をとりながら、二人に近づいていく。このままでは数分後には、二人の体はライオンの餌になっているだろう。


「まったく悪趣味な奴らだぜ。人間をライオンに喰わせるとは。やっていることは人間の悪党たちと何も変わりはしない」

 1人が反吐を吐くかのように喋った。


「いいか、まずは飛びかかる寸前のライオンだけを先に狙え。それ以外のライオンを一緒に倒すと、奴らに気づかれる。ジュンに倒されたように、見せるのだ」

 声を上げたのは、カストロだった。


 そこに、ドドーン! という爆発音が聞こえてきた。救助の別動隊がパルス爆弾を空中で爆発させた音だった。


「始まったな。これでしばらくは、俺たちの行動を奴らは気づかない」

 黒煙を一瞥し、眼を前に戻したカストロが、銃口の狙いを定める二人の部下に指で合図した。


 だがライオンたちは爆発音に少しひるんだが、獲物は逃がさないとばかりに二人を取り囲んだ。そして1頭のメスライオンが男に飛びかかろうとした。続けてもう1頭が、女に飛びかかろうとしていた。


 それよりも先に、部下の指が動いた。


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