第20章 Xデイの始まり①

「いったい何があったのだ?」

 外を見たまま独り言のように声を発した。


「隕石が落ちてきたのよ。運悪く、この建物を直撃したの」

 アマールが即座に答えてきた。


「隕石?」

 俺はひどく驚いた声で訊き返した。


「ええ、そうよ。隕石の落下は事前にわかっていたけど、落ちた隕石は鉄隕なので、完全には破壊できずに軌道が変わって、ここを直撃した」

 アマールが例の口調で淡々と説明してきた。


 隕石には、岩石の無球粒隕石、鉄とニッケルを主成分とする金属でできた鉄隕石、金属と岩石が半分ずつある石鉄隕石があるが、破壊しにくい鉄隕石が、ここを直撃したということだ。幸いにも隕鉄が小さかったので、お陀仏にならずに済んだが、もう少しサイズが大きければ確実に死んでいた。


「でもおかげで、なんとか逃げられそうだわ」

 すぐに腰を上げ、壊れた坑道の出口のようになった先に、まだ警戒したままの鋭い眼を周りにやっていた。


 そこに、秋の淡い日差しが差し込んできた。光以外に侵入してくるのは鼻を強烈に衝く煤煙だけだ。その煙の合間から青空も垣間見えていた。俺は少しほっとした。しばらくは、飛行ロボたちに襲われずにすみそうだ。たぶん。


 またも運が、俺に味方してくれたようだ。今度は汚水ではなく、宇宙からの援軍? で。だが、この隕石落下の゛始まり〟が俺の運命を、地球の運命をも変えてしまう、序章にすぎないということを、後で知ることになる。


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