第18章 汚水管路⑦
それでも俺の悪運? が、また味方してくれたようだ。
洗浄液の勢いは、足下の2メートルほどで止まっていた。だが洗浄液は、捕食するのはまだ諦めてはいないぞ、との意思を表しているかのようにその場に留まり、水位が引いていく様子はなかった。
俺がドジって、滑り落ちてくるのを待っているかのように、こっちにおいでおいでと、小さく波打っているのを足元に感じだ。
洗浄液ども、俺はお前たちに喰われたりはしないぞ! とばかりにいっそう両手両足に力を入れ、いとも簡単に登っていくアマールの魅力的なケツを追いかけるように、懸命に後を追った。
すると、なぜかアマールが登るのを止めた。さすがに、俺と同じように登り続けていたので疲れたのか?
いや、そうではなかった。どうやら壁の向こう側に、注意を注いでいるようだ。
いまでは暗闇に視界がすっかり慣れて、アマールの顔色も、大きな胸の谷間の隙間から白黒映像のように見えている。険しい表情をしているのがわかった。アマールが両足で壁を押して踏ん張りながら、銃をさっと構えた。まさかここでドンパチを始めるつもりか? だがこんな狭い場所では、ハチの巣になるのがオチだ。
「ワンヤ、タルガニーヤイビン、ウマカライヂジララン」
アマールがいきなり大声を張り上げ、変な言葉を喋った。
さっきまで話していた日本語や英語でもなく、もちろんロシア語や、中国語でもない。これがAI言語なのか? いや、たしか沖縄の離島の方言によく似ている。
しかも発した声は重低音の、男の声だった。
アマールが凄腕なのは、やっぱり男なのか? そうなら玉と立派な天狗も、まだ股間にぶら下げているかも。ということは、ヒューマノイドのニューハーフ?
いまにも命を失いそうな、こんな厳しい状況下に置かれているというのに、どこか妙にがっかりした気持ちが、俺の心に沸いていた。
ニューハーフが好きな人には、申し訳ないが。
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