第18章 汚水管路③
それから少しして、最後の洗浄液が川下の終点に流れていくように、目の前から去っていった。人間が造った管路と違い、管底には水溜まりもできていなかった。すべてきれいさっぱりとなくなっていた。
「修理ロボットたちがすぐにやって来て、穴を塞いでしまうわ。今度こそ管路一杯の液体が襲ってくる。さ、急ぐわよ。」
アマールがまた相変わらずの冷たい口調で指図してきた。
見た目は絶世の美女なのに、まったく可愛げのない女だぜ。いや人間の、本物の女ではなかった。元は、男のヒューマノイドだったんじゃないのか? 改造して女の姿になったとか。ひょっとして、あそこにはなにが、立派な天狗の鼻がまだついているかもしれないぞ、と今はどうでもいいくだらん妄想が浮かんできた。
アマールにいまも助けられている身分だというのに、これが下品な男のサガなのか? こんな状況下でも、勝手に変な妄想を抱いた頭を振った。そして、駆け出したアマールの後について走った。
聞こえてくるのは、俺たちの走る足音だけだ。ロボットが追ってくる気配はなかった。まさか5分おきに放水する管路の中を、溺れ死ぬのが確実な場所を走っているとは、誰もが思っていないのだろう。今頃は、さっきの通路の隅々を探し回っているかもしれない。だが、ロボットたちの代わりに、洗浄液がまた襲ってくる。その前に、ここから早く脱出しないと。
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