第18章 汚水管路①
汚水の死神の手が伸びて、もうすぐ足を掴まえようとしたときだった。
ドッドン! という何かが壊されたような鈍い音が壁を通じて耳に伝わると、いきなり水道管の栓でも閉じられたかのように、洗浄液の勢いが急になくなった。
そこに、ザー! ザー! ザー! という水が流れ落ちているような落水音が聞こえてきた。さしずめ、水が滝つぼに落ちるような音だ。
今度は、発砲音と着弾音が鼓膜に響いた。アマールが管路の上部に銛のような弾を打ち込んでいた。
「わたしに掴まって!」
アマールが声を張り上げきて、また上腕を引っ張られた。
俺はその声に反応して、幼い子供が母親の足に抱きつくかのように、アマールの太腿の付け根に、いや背中にしがみ付いて足を上げた。
すると、勢いを失った洗浄液が、小川のように足下を流れていった。
「足を下ろさないで! 液に触れると大火傷するわよ」
その言葉に、俺はギョッとした。
足元を流れる液体は、単なる洗浄水ではないのか? そういえば、鼻を刺激する臭いもする。
「これは金属を洗浄するための液体よ。あなたたち人間にはすごく有害な劇薬も混ざっているわ」
俺はその声にビクっと反応して、いっそう両足を高く上げた。だが、ずっとこの姿勢で保てる自信はない。いずれ姿勢を保てずに、足を下ろしてしまうのは確実だ。
下手をすれば、足どころか下半身全部が火傷を負って、最悪のケースは、大事な部分も使えなくなる。いやそれは、絶対にまずいぞ!
俺は大事な部分を守ろうと、両足を懸命に上げ続けた。
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