第11章 極寒の牢獄?②

 女を眼にして、戦慄が全身に走った。いきなり凍てつく極寒の牢獄に、濡れた全裸のまま投げ込まれた思いだった。あまりの衝撃に、喉から飛びしそうなほど心臓がばくばくと動いた。


 いままで起きていたことは、やはり悪夢ではなかったのか? ひどく動揺しながらも、即座に自問自答した。すると、あの意識を失う前のことが、また瞼に蘇ってきた。大谷に突き飛ばされた直後に、すぐ近くで何かが爆発したときのことが。その時の一瞬の模様が瞼に大きく浮かび上がった。


 大谷たちは? その時のことを思い出すと、サイボーグのような体にされた自分のことよりも、大谷たちの安否が心を占めた。二人は、無事なのか? 大谷と、名前はマリアと言っていた女が無事であることを祈り、いまは1分1秒でも早く、二人の安否を知りたい思いに駆られた。


 そこに女が、ゆっくりと近づいてきた。あのマネキンのような顔で。だが、その表情は違っていた。初めて眼にした時の感情のない顔ではなく、お化けのような怖い顔だ。


 女が側に近づく前に、逃げ出そうと起き上がろうとしたが、手足は固定されていて、首から下はまったく動かせなかった。


 その間に、女がどんどん側に近づいてきた。 

 

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