第2章 新しい世界③

 すぐには信じがたい話を聞かされて、頭が混乱したまま、マネキン女の眼を見た。


「本当にアメリカや日本が、中国、ロシアが無くなって、世界が1つの国になった、ということですか?」

 信じられないという顔を露わに訊き返した。


 頭に浮かんだ独裁という言葉は、喉の奥に仕舞った。いまはそうすべきだと思ったからだ。


「ええ、そうです。アメリカやロシア、あなたの国の日本や、中国も、世界の国は5年前に全て無くなって、AIが管理する世界が誕生しました」

 また機械的に説明してきた。


 その氷を連想させる冷たい口振りと愛想のない表情は、見方によっては、まるで感情のないロボットか、アンドロイドのように思えた。それともやはり、マネキンが喋っているのか?


「いったい、どうやって? もし本当にそうなら、北朝鮮問題や中東、アフリカの内戦のレベルではない。アメリカと中国やロシアの、核の全面戦争が起きてしまう」

 俺も同じ口調で、疑問を投げ返した。


 アメリカと中国、ロシアは水と油の世界だ。世界の覇権を争う軍事大国が、仲良くなるとは到底思えない。世界には選挙を実施するなど、自由と民主主義の国家のように装っているが、選挙とは名ばかりの国も多い。ましてや社会主義、王制独裁の国が、民主主義国の仲間入りするとは到底思えない。


「いいえ、核の全面戦争は起きませんでした。反乱軍は直ぐに全滅して、新世界が地球に誕生しました」  

 また感情のない声で説明してきた。


「いったい、誰が? どうやって実現させたのですか?」

 肝心な質問に答えなかったので、再度訊き返した。


 世界が一つになったという喜びなどはまったく湧かずに、すごく嫌な予感が、どんどん増幅していた。不安が増していくと、すぐに家族のことが頭に浮かんだ。俺の家族は無事なのか? 生き返ることができたバラ色の心は、完全に消し飛んだ。


 家族の安否を確かめに、すぐにでも飛んでいきたい思いに強くかられた。だが、ここがどこなのかさえもわからない。


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