第1章 マネキン女④

「いまは、何年ですか?」

 驚いたままの顔をぶら下げ、まだ硬いままのぎこちない口で訊ねた。


 日本のアニメやSF映画にでも出てきそうな、女の奇抜な服装や、鉛色の無機質な室内の様子からして、少なくとも百年以上は経っているように思えた。それと女の感情のない話しぶりを耳にしていて、ますます本物のマネキンに見えてきた。マネキンと違うのは、固い材質体ではなく、そのすごく綺麗な顔もモデルのようなスタイルも見た目と違って、どうやら意外と柔らかそうだということだ。


「2082年の9月16日です」

 今度は、どこか機械的な口調で答えてきた。


「え? まだ2082年?」

 俺はまた驚いて、上ずらせた声で訊き返した。


 眠りについて、まだ43年しか経っていないということは、やはり息子の竜司が、俺を再生させたのか? それと、眠る前に別れを告げた家族全員も、まだ生きているはずだ。但し、俺より年老いた姿で。いや、俺のように施術していれば、眠りにつく前に最後に眼にした姿のままかもしれない。


 まったく思ってもみなかった、愛する家族に再会できる希望が出てきて、俺の心は不満の色から一瞬でバラ色になった。


 家族に会える! 思わず、眼に笑みを浮かべた。

 すぐにでもここを飛び出して、家に帰りたかった。

 

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