第41話、女神様のお茶会

「貴方のクラスメイトは皇国によって洗脳されるの」

「それは、どういう…」

 何のために?

「何故って顔してるわね…普通異世界に来る時は強力なスキルやステータスが貰えるのよ」

──つまり、強い兵隊が手に入るって事──


 そう言って再びアンジュ様は再びティーカップを傾ける。

 それに倣って俺もお茶に口をつける。

 その瞬間俺は衝撃を受けた。

「紅茶じゃなくて麦茶じゃないですか、これ」

「あら、私の少しあげるからそれちょっとちょうだい」

 まさかの初対面で間接キスイベント?まぁ俺としては吝かでも…ゲフンゲフン


「いや、自分のがあるでしょうが」

 俺は硬派である。俺は硬派である。俺は硬派である。よしここは毅然とした態度で

 

「お茶の味は毎回ランダムにしてる──」「交換させていただきます」

 逆らえんて…こんなの。


 そして受け取ったお茶を飲み、女神の(お茶)の良い香りや、女神の(お茶の)味などを堪能し──


「フグッゲホッゲホッ酸っぱぁっ‼︎このお茶なんで──」

 そこまで言ってアンジュ様がこっちを見てニヤニヤしているのに気がついた。


「え〜?何って梅昆布茶よ?梅成分マシマシの」


 交換を持ちかけたのはこの為か…無念なり。だが女神成分を摂取したことに後悔はな──


「あ、そうそう。そのお茶、汚れとか唾液とか付かないから間接キスとか気にしなくて良いよ?あと言動が変態くさいわよ?」

 さらにニヤニヤしながら追い打ちをかける女神様(アンジュ様)。確かにさっきの言動は変態の鏡だ。ここは…ありがとうございま──じゃなくて…ごめんなさい。


 さっきまでのことを整理すると俺はただ酸っぱいお茶を飲まされただけじゃねぇか‼︎


「あら、無理矢理飲ませたなんて人聞きの悪い。私はレモンティー(笑)を味わって欲しくてわざわざ飲んでいた緑茶を消してまで酸っぱいお茶が出る確率を高くして入れ直してあげたのよ?梅昆布茶が出たのは偶然よ偶然」

 だが、俺は覚えている。お茶を交換した時に妙にニヤニヤしていたことを…

「ところで、何で中身が梅昆布茶だと分かったんだ?」

「い、いや偶然よ偶然。それにほら…良い女には秘密がつきものよ?」

 自分でいい女とか言ったよこの神様

口の中の酸味を取り除く為に机のにあったチョコを口に放り込む。あんまい…最後にバレンタインチョコを貰ったのはいつだったか…いや、貰った事ねぇわ…


「まったく…話が進まないから保護者も呼ぼうかしら」

「俺に保護者?」

 はて?誰のことかしらん?


「久しぶりティアティア」

 


「やっぱり呼ばれましたか」

 後ろを振り返ると、ティアティアことティアがいた。なんかいつにも増して不機嫌そう。

 アンジュ様の事を一瞥しこちらを向いて僅かに顔をしかめてそして一言。


「ユウジ、あの女になんかされましたか?」

「ユウちゃん信じてるからね?」

 アンジュ様も眼をウルウルさせて一言。


 えっ何この状況…

 取り敢えず間接キス云々の事は伏せておこう。話すと地雷っぽい。

「何かされたと言っても、話を聞いてそれから酸っぱいお茶を飲まされたくらいだが…」

「そうそう、これは間接キスか?って悩んでいたよ?結局口つけてたけどね」

 アンジュ様がニコニコそんなことを宣った。


 ティアの顔から表情が消える。俺の明日までの生存率も消し飛ぶ。こんな状況を引き起こした犯人はニコニコしている。


「何か遺言…弁明はありますか?」

「う…」

「う?」

 アンジュ様が楽しそうに首を傾げる。


「裏切り者ぉ〜‼︎」

 さぁ、やるならやれ‼︎……あまり痛くしないでね?



「まぁ冗談はここまでにして、何で呼ばれたんですか?」

 え?冗談?取り敢えず明日までは生きられそうだ。

「彼のお仲間のことよ。洗脳されて教国にいるのよ」

「はぁ〜、本当に転生神は何をしているんですか」

「今回は転移だけどね…」

「結局同じ管轄じゃないですか…」

「ここ最近はこれと言ったミスも無かった筈なんだけどねぇ」

「ミスの程度が酷いんですよ。アレだって…」

「アレ…本人も未だに気にしているわよ」

「いや、気にしてなきゃダメすよ。アレのせいで私達は…」


 なんかお二方で盛り上がっていらっしゃる様だ。暇なのでお茶を…うん。酸っぱいんだった。


「で、あなたの友人の話なのにどうしてあなたが一番寛いでるのかしら?」

「いやぁ、色々ありそうだったので。で、俺に加えてティアまで呼んだって事は洗脳されていますって話意外にもなんかあるんですよね?」

 話が進まないから保護者を呼ぶと言ったからには何があるはず。


 アンジュ様は少し驚いた様な表情を見せる。

「あら、一応は話を聞いていたのね…コホン」

 咳払いをしたアンジュ様はここからが本題です。と前置きをした。そして、

「あなたには二つの選択肢があります。一つはクラスメイトのことは忘れて生活する道。クラスメイトの方々は良い戦力なので当分殺されることはないと思います。でも十年後は分からないわ。二つ目は…」

 そこでアナはため息を吐く。

「二つ目は?」

「二つ目はあなたがなんとかする道よ」

「はい?」

 何故何why?

「「ふざけない」でください」

 アナ様と、ティアの両方から怒られた。

 あれ?アナ様はともかくティアも心を読める系?

「残念だけど私達神は余程のことがない限り地上には直接干渉することはできないの。まぁ、神のお告げみたいなのはセーフだけどね。だから、簡単に言えば貴方が洗脳を解く。危険だけどリターンは大きいわ。すぐに決めて貰わなくてもいい。自分なりに考えて後で結論教えてくれたらそれでいいから」

「なんでそこまでしてくれるんですか?」

 

「…じゃ、考えておいてね?」

 俺の質問には答えず、アナ様は軽く手を振る。



 そして、視界は暗転した。





 気が付いたら教会の祭壇の前に立っていた。

「…それで、どうするか決めましたか?」

「取り敢えずもう少し情報を集める。話はそれからだ」


『うんうん、やっぱりそうした』


「ティア、なんか言った?」

「いいえ?」

 凄く不思議そうな顔をしている。

『脳に直接語りかけてるからティーちゃんには聞こえてないわ〜。悪口も言い放題?』

 アナだった。さっきのニマニマした顔を思い出したら無性にイラッときたので。

「ティア、アンジュ様が俺の脳内で…『ノゥ』」

「脳内で?」

「なんかやっぱりそうしたかって話してる」

「神のお告げの濫用ですね…」

 え?これ神のお告げ?ありがたみも何もねぇ…

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