第35話、護衛依頼1
「ユウジ、来たか!」
「はい!えっと‥」
「今回の依頼のリーダーを務めるC級冒険者のツオルクだ」
四十絡みのハンマーを背負った渋い雰囲気漂う冒険者が自己紹介をする。
「宜しくお願いしますツオルクさん。ところで‥他のメンバーは‥‥」
「あとは、お前の所の嬢ちゃんだ。」
「アルテアです」
ティアがすかさず訂正する。嬢ちゃん呼びは嫌なのかな?
「アルテアか‥いい名前だな。宜しく」
おっと、ツオルクさん意外に紳士。
「3人‥‥」
「比較的安全な道だから心配することは無いだろうよ」
ツオルクさん‥‥それ、フラグですよ?
多分、大丈夫じゃないヤツです‥‥
「皆さんお揃いですか?」
金髪の小太りの男性が馬車に乗ってやって来た。
「私が依頼主のアナン・コシェートです。それでは出発しましょう」
人数が少ないため、俺たちはアナンの乗る馬車に乗り移動することになった。
数十分後、
カラカラカラカラ
車輪が回る、そんな長閑な音をBGMに俺は窓から流れる景色を眺めていた。
なるほど、ツオルクさんの言った通りモンスターはおろか、獣の一匹すら現れない。
「確かに、ツオルクさんの言った通り何もありませんね」
「‥‥そうだな」
なんだろう、ツオルクさんの返答はやけに歯切れが悪かった。
「どうしたんですか?」
「いや、妙なんだよ」
「と、言うと?」
「普通、安全な道といってもここまで何もない事はない。それにアルテアにユウジ、お前ら出発してから今まで一匹でも動物やモンスターを見たか?」
「いや(いえ、)見てない(ません)」
「だろう?俺もだ」
「て、事はここら辺にヤバいモンス‥‥」
「ユウジ‼︎モンスターだ‼︎迎撃するぞ‼︎」
突然、ツオルクさんが怒鳴る。
馬車の外に出るとそこには狼の群れ、鑑定眼によると、サベージウルフ名前のとおりいかにも凶暴そうな狼の群れに囲まれていた。
「こいつらは単体はそうでもないが、複数を一度に相手するのは面倒だ。だから突っ込むなよ?」
マジか、ど真ん中に突っ込んで暴れる気、満々でしたよ。
「死んでも死ぬなよ?」
ツオルクさんが獲物のハンマーを振りかざす。
‥‥要するに命大事にって事ですかね。
サベージウルフの群れのうち一匹がついに我慢できないといった様子で俺の喉笛を引き裂かんと突っ込んでくる。
俺は逆にそのサベージウルフの首をを剣で刎ねる。
ツオルクさんの言う通り、どうやらそこまでは強くないようだ。
数分後‥‥
サベージウルフの群れは約半数を失って退却していった。
心配してはいなかったが、ツオルクさんはハンマーで殴ったと思いきや、にして恵まれた肉体を活かした蹴りを叩き込んだりと多彩な技を駆使して終始サベージウルフを圧倒していた。
「ユウジ、アルテア、さっさと剥ぎ取るぞ」
「「はい」」
剥ぎ取りながら
「ユウジ、それにアルテアも、それにしてもおかしいと思わないか?」
ツオルクさんが未だに何かに納得できないといった表情でそう告げる。
「と、いうと?」
「確かにサベージウルフは群れでいると面倒なモンスターだ。だが、それが今回の動物に合わなかった理由というには無理がある。もしかしたら、この先ヤバいヤツが出てくるかもし‥‥アルテア、ユウジ伏せろ‼︎」
ほぼ条件反射的にその言葉に‥‥間に合わない。
刹那
何かが俺の上に覆い被さった。そして
ゴォォォォ
炎が視界を覆う。
炎が消え覆い被さっているものをどけようとして、
「ツオルクさん?」
「ぐっ、効くなぁ」
火傷塗れになったツオルクさんが体の上にいた。
ニ撃目が来ないうちにツオルクさんを抱えその場から離れる。
馬車の近くにツオルクさんを横たえ、そして炎が来た方、前を見ると、其処には炎に包まれたトカゲが悠然と佇んでいた。
ついさっき炎が一面を覆った筈なのにまるで背中に氷柱を差し込まれたかの様な寒気が止まらない
ツオルクさんを抱えている間に攻撃しなかったのはさっきの攻撃を連発するのが難しいからか、それとも余裕の現れか、恐らくは後者だ。
「あれは、ハァ、まさか‥‥サラマンダーか?」
ツオルクさんが苦しげにそんな声を漏らすが、それさえもひどく遠くに聞こえる。
「‥ウジ‥‥ユウジ!」
肩を乱暴に揺すられハッと我に帰る。
いつの間にか近くにティアが立っていた。
「残念ながら私はアレには勝てません」
「‥っ。そんなに‥」
淡々と絶望的な事実だけを伝えるその様子に場違いな怒りを覚える。
「だけど絶対に負ける事もありません」
再びの言葉。
分からない。ティアとあのトカゲはどんな力関係なんだ?
「端的に言えば私もあのトカゲ‥炎の精霊、サラマンダーもお互いを攻撃出来ないのです」
「それじゃあ‥‥」
「えぇ、私が馬車とツオルクさんを護るので貴方はサラマンダーを‥」
「分かった。ところでアレの弱点とか何か知っている事は無いか?」
「炎の下級精霊、魔力は条件付きだけどほぼ無限。それと‥‥サラマンダーは‥‥精霊は基本的に物理攻撃は効きません」
えっ、攻撃魔法なんて使えないんだけど‥‥。フレイ辺りに習っておけば良かった。てか、物理攻撃無効なんて、それ何て無理ゲー?
だが、有り難くも我がパーティー(パーティー名未定)のパートナーは解決策も用意してくれたようだ。
「時間が無いのでよく聞いてください。物理攻撃が効かないので剣に魔力を纏わせてください。」
「剣に?」
魔法剣みたいなものだろうか。
詳しく聞こうとして、ふと、サラマンダーの方を見て戦慄した。サラマンダーの口元に大きな火球が‥‥そしてこちらへと放たれる。
文字通り消し炭になる明確なイメージを伴って。
瞬間、アルテアが動いた。
炎を剣で切り裂く
近くで炎が爆ぜる。
衝撃が前髪を揺らす。
その瞬間、俺も走り始める。
相手の強さ不明、倒し方魔法剣(仮)未修得、相手の魔力はほぼ無限。圧倒的に不利な戦いが始まった。
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遅れてすいませんm(_ _)m
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