第32話、お説教とお節介

「3日後からの王都までの護衛依頼‥‥だね」

 朝一で俺とアルテアはギルドに来ていた。王都行きの依頼を探すためだ。


「はい」

「ところでお嬢さんの方は冒険者登録しなくて良いのかい?このままだと置いてけぼりだよ?」

「じゃあ、お願いします」

「2人はパーティーを組むって事で良いかい?」

「パーティーってことでお願いします」

「あいよ、記入よろしく」

 サリー嬢がアルテアに登録用紙を渡す。


「リーダーは‥‥ユウジで‥‥大丈夫かな‥‥ダメかもしれないねぇ」

「ちょ、ちょ、何でですか?俺がリーダーだと問題が?」

「あーうん、お嬢さんの方が慎重な性格かと思ったが、お嬢さんの方も似たような感じがしてきた‥‥頑張りなさい‥‥」

「何かを達観した目⁉︎」

 サリーさんが悟りを開いたような目をしていた。

「ところでお嬢さん名前は?」

「アルテアです。おば‥‥貴女は‥‥」

 流石にアルテアもおばさんと呼ぶのはやめた方が良いと悟ったらしい。


「私かい?私はサリーこのギルドのただの受け付け嬢さ」

「嘘つけ‼︎この前ギルマスが叱られてたの見たぞ‼︎」

 誰がそんな事を叫ぶ。

 叫んだのは金髪のイケメン君だ。

 サリーさんが声のした方に流し目を送る。

 

「あら、ディーン。そんなに私と話したいなら今度ゆっくり話そうじゃないか」

 哀れディーン君は顔を青くして突っ伏してしまった。周囲も同情する様な、あるいは、勇者バカな奴を見る様な視線を送っている。


「っと、まぁ、ただのギルドの職員だから宜しくね」

 今ギルドの中にいる人は皆思っただろう。


 『こんな受け付け嬢が普通なわけねぇよ‼︎』


と。


 と、そのタイミングで、 

「書き終わりました」

 必要事項を記入していたアルテアが記入用紙を提出する。


「名前は‥‥アルテア‥ちゃん‥アルテア‥さん‥‥アルテアだね」

「はい」

「じゃあユウジ、アルテアに説明を‥‥と言いたいところだけどねぇ〜あんたも危なそうだからもう一度説明しておくよ」


「まず、ランクはFからSSまであるけど依頼の達成度によって昇格が現在はAランクまでしかいないのよねぇ、ほんと、昔のSランク以上どんな化け物なんだか‥‥、基本、冒険者は、自分のランクと同じパーティと時は自分のランクの一つ上のランクの依頼までは受けられるけど、絶対に無理はしちゃいけないよ?」

 本当にその通りだ。まったく‥‥何でそんな事も守れないんだか‥


「特にユウジ‼︎」

 そう、そう。特に最近のユウジは‥‥‥ん?‥‥あれ?おかしいなユウジって聞こえたぞ?


「聞いているのかいユウジ‼︎」

「お、おれ?」

「あんた以外に誰がいるのよ‼︎あんたは既に2回もやらかしているんだ。もう少し慎重に成りなさい‼︎」

 どうどう、そんなに怒鳴ると体に障るぜ


「誰の、せいだと、思っているんだい⁈」

「すいませんでした」

 どうやらサリーさんは心が読めるらしい。間違っても失礼な事を考えないようにしよう‥‥


 ギロリッ


 そんな幻聴おとが聞こえるほどの形相で睨まれた。



「たくっ‥‥んんっ、話が逸れたね。魔物の素材はギルドで買い取るから持ってきておくれ。冒険者同士の争いは基本ギルドは関わらないけど、大事になれば処分を下すこともあるから注意するんだよ?特にお嬢さんは美人さんだから柄の悪い奴に絡まれそうだけど、そこはユウジが‥‥いや、お嬢さんが頑張るんだよ‥」

「ちょ、待って、何で言い直した?」

 流石にこれはおかしい‼︎


「ユウジ、あんた‥‥これまでの行動を振り返ってご覧」

 これまでの行動‥‥ゴブリンがりをして兎にボコられた挙句、ベヒーモスに追いかけられ迷子に‥‥アルテアの封印を解いたと思ったらボコられ‥‥その間ブラッド達には心配をかけていたことが判明‥‥‥


「もしかしなくても、ただのトラブルホイホイじゃん‼︎」

「加えてクズだな」

「そうそう、俺なんてただのクズだ!って誰だお前‼︎いきなり横から罵倒してくんな‼︎」

「俺?俺はハンス。黎明の狩人のリーダーさっ!忘れたとは言わせないよ?」

 ‥‥‥誰だっけ?‥‥黎明の狩人‥‥狩人‥‥兎‥‥


「あ、あ〜、兎の狩人のハンスさんですね?」

「れ・い・め・い、だ!兎じゃない‼︎」

「で、その映えある黎明の兎のハンスさんは何の御用で?」

「用は‥‥用は‥‥ない‼︎強いて言えば、ちょっかいを出しに来た‼︎」

 あっ、そう‥‥‥


「兎に角、トラブルには気をつけるんだよ?」

 と、サリーさん。

 兎だけに?と言えたらどんなに良かっただろう。ただ、悲しいかなそんな事を言う勇気は俺にはなかった。


「「分かりました」」

 ハンスさんみたいな人には気をつけなくては‥‥


「あ〜、一つ忘れていた。ユウジ、アルテア、大丈夫だと信じたいけどユウジの事だ、手も早そうだし一応言っておこうかい」

 そう言って一息つくと、


「年頃だからそういう事をするな‥‥とは言わない。でも、するんだったら依頼のない時にしなさい‼︎依頼の時に腰が抜けて立てませんとか、寝不足で失敗しましたとかなったら目も当てられないから‥‥」

 

「「っ⁇」」

 巨大なお節介だった。


「あら、少し早かった様ね‥‥まぁ、兎に角体調管理はしっかりなさい」




「「‥‥はい、‥‥」」

 顔が熱い。

 そして、今度、今のやり取りで笑っていた奴らに今度仕返しをしようと誓った。

 特にハンスお前だけは許さねぇ、ゲラゲラ笑いやがって…ウッサウサにしてやんよ‼︎

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