第31話、心にダメージを与える剣(元厨二特攻)
「ユウジ‥ユウジ‥」
意識が深海から引き上げられる。
「おはよう、アルテア」
「おはようございます。ってそれより急いでください‼︎今日は武器を買いに行く日でしょう?混みますよ?」
「あっぶね!忘れてた‼︎」
慌てて支度をし、朝食を流し込み、街へと繰り出す。
「武器は何にします?棍棒?他には‥‥棍棒?それとも棍棒?」
アルテアがニヤニヤしながら問いかけてくる。全部って言おうとして気がついた。
「‥‥おい、選択肢が棍棒しか無いじゃねぇか」
頭をグリグリする。
失礼な事を言う頭はこの頭か…グリグリ
「いひゃい、いひゃいです、まったくユウジたら乱暴なんですから」
これは初めて学んだことだが、往来の只中で少女の頭をグリグリしていると周囲の人の視線が痛い。さっきから冷たい視線がドスドス刺さっている。
あの人女の子をグリグリしてるの〜
しっ!見てはいけません‼︎
なんて声も聞こえる。
これ以上やると衛兵なり警察的な何かを呼ばれそうなのでやめておいたほうが良さそうだ。
そうこうしているうちにギルドで聞いた武器屋が見えて来た。
店内に入って早々、
「あの剣‥‥」
アルテアが口籠る。
「‥‥分かってる‥‥なんて言うか…その、凄く独創的なデザインだな‥‥」
一番先に目に入って来たのは奥に飾られている大剣だ。
だが、ただの大剣と侮る勿れ。──その大剣は警告色(黒と黄色の縞模様)だった。
近くに行って見てさららる驚きに見舞われた。
「漆黒と金色のカオスソード?ぐっ、頭が‥‥」
厨二が顔を覗かせる──どころか、全面に出た大剣だった。
「ヘイ、らっしゃい」
がなるような声のした方向と見ると禿頭のマッチョなおっさんが立っていた。
「その剣か?それはこの街の若ぇ鍛冶師が作ったものだ。
そこでおっさんは一度大きく息を吐くと‥‥
「イカした名前だろ?俺が付けたんだ」
サムズアップと共に花が咲くような笑顔(凶相)を送りつけてきた。
余りの衝撃にアルテア共々フリーズしていると、
「‥‥あまり受けは良く無かったようだな‥‥」
おっさんがシュンとする。
ただし、マッチョなおっさんがシュンとしてもまったく可愛くない。
「今のを客が来るたびにやってたら店が潰れそうなんだけど⁈」
いかん、思わず突っ込んでしまった。
「そうか‥‥だから最近売り上げが落ちてきたのか‥‥」
「既に手遅れだった⁈」
「因みに俺が名前をつけたと言うのは冗談だ。実際は鍛治師の奴がこの名が良いと言って聞かなかった」
「‥‥」
この件の作者は左手に何かを封印とかしてるのかもしれない。は…、まさか右眼が疼いたり光ったりすることも…。
「それはそうとして何をお探しで?」
「剣を‥‥それも丈夫なやつで。出来ればこの価格以内に収めたい」
そう言って今の所持金の約半分を差し出す。
ベヒーモスの素材は未だ死蔵してあるが、ゴブリン達を換金した金で資金に多少の余裕はある。
おっさんは少し考えるような素ぶりを見せつつ一つの棚の前で立ち止まる。
「これはどうだ?装飾はねぇがつくりはかなりしっかりしていると思う。少し振ってみろ」
そう言って渡されたのは無骨な片手剣だった。
軽く振ってみると‥‥
「‥‥軽いが確かに丈夫そうだ。これを貰って良いか?」
「おう‥‥代金はこれだ」
と予算の8割くらいの価格を提示する。
そして、毎度あり。とポツリと言った。
「これで武器問題も無事かいけつ‥‥‥あっ」
「ユウジ?」
アルテアが少し心配そうに見てくるが応えられない。俺は、俺は重大な事を忘れていた。
「あの剣を作った鍛冶師の名前聞くの忘れてたぁぁ〜」
あの痛い(厨二感溢れる)名前を思いつくなんて多分、作った鍛冶師はかなりの強者だろう(主にメンタル的な意味で)。
なんだ、そんな事ですか。とアルテアがガックリしているが関係ない。
「俺はまだ見ぬ彼と友になりたかった‥‥」
宿にて、夕食を取り終え後は寝るだけと言うところで、
「ところでいつから王都に?」
ウキウキとした雰囲気が滲み出た様子でアルテアが聞いてくる。
「そうだなぁ〜早く行きたい?」
「えぇ、早く言ってみたいですね。依頼で王都まで行けば安上がりじゃないですか?」
「‥‥明日あたりから王都行きの依頼でも探すか。ところで何でそんな楽しそうなんだ?」
と聞くと、えっ?と言う表情をされた。
「王都ですよ?都ですよ?」
高校生とかが地元を出て首都圏とかに行きたいとか言うアレか。
「早めに見つかると良いな」
こうして王都への出発はクエストが見つかり次第ということになった。
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