第30話、side輝とある日のダンジョン攻略

side輝


 ダンジョンでのレベル上げは続く。

 レベルが上がり、ステータスは既にロシムのそれを大きくを超えた。

 今のステータスはこうだ。


キゼ アキラ 種族:人間 レベル56

HP:48500/48500 MP:30000/30000

VIT:30000 STR:30000 AGI:30000 DEX:30000 MEN:30000 INT:30000

固有スキル:斬術

スキル:言語理解、アイテムボックス、自動回復、魔力回復、剣技 lv33、身体強化 lv36、聖属性魔法lv14、魔法剣lv9

称号:異世界人、早熟、勇者、神の祝福を受けし者

SP:70


 聖属性魔法と魔法剣が増えた。聖属性魔法は文字通りアンデットなどに特効の魔法だ。魔法剣と言うのは魔法を剣に纏わせると言うもので火力が出るので重宝している。


 既に騎士団が付いて来ることができる層を超え、俺たちは四人パーティーに分かれてレベルアップに努めることにしていた。



「次の層で40層ね」

 そう話しかけて来たのは、固有スキル大魔道の横井絵梨香だ。

 

「そうだね、でもこれまでのパターンだと次の層の敵はかなり強い筈だから‥‥エリカの魔法頼りにしているよ」

「うん、任せて!やばい敵が出て来ても全部燃やし尽くすから‼︎」

「‥‥程々にね?じゃ無いと私達までこんがり焼かれちゃうから」


 そう苦笑いしながら会話に入って来たのは我がパーティーの回復術師、白崎緋凪である。


「大丈夫!乙女は丸焼きになんとならないから‼︎」

 と、同じく我がパーティーの斥候、石井和葉が続く。さらに続けて


「それにね、他の男子はともかくアキラだけは大丈夫だよねーエリカちゃん」

「ちょっ、カズハ⁈」

 なんだろう‥‥エリカが顔を真っ赤にしながらカズハの口を塞ごうとして追いかけっこしている。


 だが、悲しいかな身体能力は魔導士のエリカより斥候のカズハの方が上で‥‥


「だって、アキラはエリカの好きなひ‥「ダメェ〜‼︎」へぶしっ!」


 かなり焦った様子のエリカがカズハにチョップを叩き込んだ。

 前衛職の俺から見ても惚れ惚れする様な動きだった。(エリカを怒らせない様にしよう‥‥)


「ア、アキラもしかして聞いてた?」

「いや?見てないけど‥‥」

 思いっきり聞き耳をたててました、なんて口が裂けても言えない。


「ヘイヘイ、あんちゃん嘘はいけねぇゼ‼︎アキラに耳あり障子にメアリー。ばっちり聞き耳たてていたの、分かってるんだぜ?」

 頭を押さえながらカズハが追求してくる。頭‥‥結構痛かったんだな‥‥涙目になっている。

 けど、それよりも、


「カズハ‥‥その口調はどうしt‥『やっぱり聞いてたの⁈』‥‥ハイ、スミマセン」

 おかしいな…聞いてないとは一言も言ってないんだけどな〜

「うぅぅ〜、もう‼︎さっさと次の層へ行くわよ‼︎モンスターなんて私の魔法で殲滅してやるわ‼︎︎」

「期待してる‼︎」


 こうして次の層へと歩き出した。

 このパーティならどんなモンスターが来ても大丈夫だろう。


 それにしてもなんでエリカはあんなに焦ってたんだろう。カズハが言おうとしたのは俺ならエリカの魔法を受けても軽傷で耐え切れるってことだと思うんだけどなぁ〜




 なんて思っていた時もありました。

 ここは40層。そしてパーティーは大混乱です。──と言うのも‥‥


「きゃァァァァ蟲ィィィィ」

 エリカの声が響く。


 この層の敵は蟲系、斬り付けると蟲汁がぶっ掛かるハード仕様。しかも蟲汁は臭い上にドロっとしている。

 何で俺がこんなに落ち着いているかって?

 一回、蟲を斬りつけて皆んなに蟲汁をぶっかけてしまい、エリカに緊急時以外この層では遠距離攻撃だけにせよと厳命されたからである。


 そしてそのエリカは蟲に絶叫している。


「きゃァァァァ〝ファイアーストーム〟〝ファイアーストーム〟〝ファイアーストーム〟〝ファイアーストームぅぅぅぅ〟」

 エリカが絶叫しながら魔法を乱発している。

 ダンジョン内の温度が上がりまくる。

 まるでサウナ。


 ハッ、もしかしてさっきの白崎の発言はフラグだったのか⁈


「「エリカちゃんストップ〜‼︎」」

 カズハと白崎が叫ぶ。


「きゃァァァァ‼︎って、ヤバっ」

 エリカが我に返った。


「〝アイスランス〟〝アイスランス〟〝アイスランスぅぅぁ〟」

 慌てて氷属性魔法で冷やしている。

 

 轟轟と燃え盛る炎の中に刺さる氷の巨槍。

 それはまるで燃え盛る炎と凍り付く大地。

 ゴクリッ

 思わず喉が鳴る。

 これは‥‥ユウジから聞いたことがある。

 地面が凍り、その上の燃え盛る炎‥‥それは‥‥


「これが‥インフェルノか‥‥」


 残念ながらこの呟きに反応してくれるひとはいなかった。

 

 数分後、インフェルノ(仮)を引き起こした本人は凹んでいた。


「うぅぅぅ。ゴメンみんなぁ〜」

「被害は無かったし大丈夫だぜ‼︎」


 そう言って豪快に笑うのは須賀竜賀──主に格闘系のスキルで敵に突っ込んでは、攻撃を避けようともせず殴り合う脳筋‥‥怖いもの知らずだ。今日も今日とて止められたのに蟲の群れに突っ込み蟲汁塗れになっていた。

 さっきもインフェルノの真っ只中に突っ込もうとしてカズハ達に止められていたのだ。

 

 まぁそれは良いとして、俺もエリカには言わなければならないことがある。


「むしろあのインフェルノをこの目で見られるとは‥‥ありがとう。‥‥君のおかげで夢が一つ叶った」

 いつかユウジに再会したら自慢せねば。


「あれはインフェルノじゃ無くてただ魔法を乱発しただけだよ⁈」

──訂正、俺の夢は叶っていなかった様だ。  待っていろユウジ‥先にインフェルノを見るのは俺だ‼︎

 ついでにレベルも上げてやる。インフェルノを見て魔法に巻き込まれて死んだらユウジに自慢できない。


 俺のインフェルノを求める旅‥もとい‥‥皇国を救うための旅はまだ続く。

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