第24話 いと懐かしき乱入者

 sideブラッド

 俺たちは一度全滅しかけた。あれは冒険者になりたての頃だった。偶々死にかけていたゴブリンを倒しゴブリンを倒すことも出来るのだと調子に乗った俺たち‥‥いや、俺は樹海に入り、そして仲間を殺しかけた。その時に兄貴──ユウジに助けて貰え無ければ、全滅していたかもしれない。あの日、樹海帰り道でユウジの兄貴と話しながら、何があっても仲間を守る。そう誓った。


 それから、暫くは樹海の外で獲物を狩り、レベルを上げ、散々迷っていたパーティ名をパーティメンバーと見た日の出が綺麗だったからと言う理由で〝暁の輝き〟に決定したり、地味だがとても充実していた毎日だった。だが‥‥突如穏やかな日々は瓦解した。ことの発端は‥‥‥


「なにっ?ユウジの兄貴が帰ってきていない?」

「見てないかい?いつも樹海の浅いところでゴブリンと薬草採取をしていて‥‥いつもならもうとっくに帰ってきている筈なんだけどねぇ」

 そう言って心配そうな顔をする受付嬢サリー


「見てないです。俺、樹海に行ってきます!行くぞ!フレイ、ユーナ、カイン!」

「まちな!」


 ガタイの良い先輩冒険者に肩を掴まれ、止められる。


「もう暗い!今行ったら、今度はお前らがやられるぞ‼︎」

「離してくださいライルさん!」


 ライルさんはこのギルドで唯一のBランク冒険者だ。


「ユウジの兄貴は生きてます!だって、お金になりにくいから誰もやりたがらない薬草採取をあんなに‥‥」

「気持ちは分かる。だが、明日にしよう。なに、奴なら生きてるさ。俺も探すから大丈夫だ」

「ライル頼んだよ‥‥。と言ってもユウジならそのうち道に迷ったとか言って帰ってきそうだけどねぇ」

「ライルさん!明日、俺達にも参加させて下さい!何がてきるか分からないけど、それでもアニキを助けたいんです‼︎」

「‥‥仕方ねぇ、その代わり、死ぬなよ?」

 頭をガシガシ掻きながらそう返事をする。

「はい!」


 こうして、ユウジの兄貴を探す事になったが、捜索は困難を極めた。何より樹海と一言で言ってもその広さは一国をはるかに上回るのである。しかも奥地にはAランク、あるいはそれ以上の化け物が巣食っていて、しばしばBランク相当のモンスターが追い出され樹海の浅いところまで出てくるのだ。


 そして、アニキが失踪してからはやニヶ月、未だ痕跡1つすら見つかっていない。捜索に参加していた人も一人また一人と捜索をやめ、残ったのはライルさんと俺たち〝暁の輝き〟のみになった。とはいえ捜索だけしているとお金があっという間に底をつくので依頼をこなしながらではあるが。


 今日はライルさんは用事があり、俺たち〝暁の輝き〟のみで捜索兼、依頼をこなしていた。依頼はアングボアの討伐で、アングボアとは、有り体に言えば獰猛な猪である。こーを狩ることが中級者の証とも言えるモンスターだ。もう幾度となく狩ってきたモンスターである。だが、


「なんで、こいつら一緒にいるんだ⁈」


 なんとアングボアを狩ろうとしたら近くからもう一匹さらに一匹と、計三匹現れたのだ。正直一人一匹を相手にするのはまだキツい。


「知らないわよ!どうする?」

「フレイ!今打てる最大威力の魔法を!ユーナは支援魔法と回復を頼む!カイン!フレイの詠唱が終わるまで奴らを俺と抑えるぞ!落ち着いて数を減らせばなんとかなる筈だ!」

「「「分かった(わ)!」」」


 四匹のうち一匹が突っ込んでくる。本来ならそれを避けて後ろから斬りかかるのが安全な狩り方なのだが、今躱せば、詠唱をしているフレイに突っ込んでいくことになる。だから‥‥


「カイン!頼む!」

「おう!」


 そう言うとカインは盾を構えアングボアの前方を塞ぐように立つ。一方の俺は、


「少しでも、勢いを削る!」


 突進するアングボアの足をすれ違いざまに斬りつける。


「グモォォ」

──そんな声と共に突進のスピードが落ちるカインが盾で受け止めたのを見て、カインは前から俺は後ろからアングボアに斬りかかる。───あと三匹。だが、


「危ない!」

「えっ?」



一匹を仕留めることに集中していたため、反応が遅れた。


刹那、


衝撃。


受け身も取れず、真横に吹き飛ぶ。


幸いそれ程深刻なダメージでは無い。


 どうにか立ち上がる。

だが、


「「ブラッド?」」


「痛っ、あ、足が」


 足がズキリと痛み再び倒れる。どうやら足首を捻挫したらしい。残りのアングボアは三匹、カイン一人で捌くには無理がある。かと言ってアングボアは足が速い、ただでさえ走ったらあちらの方が速いのに、俺が足を痛めた以上、全員が逃げ切るは不可能。囮が必要だ。〝俺を置い逃げろ〟そう言わなければならないかと逡巡したその時、

 目の前に人影、そして


「ブラッド!助けはいるか?」


 聞きたかった、そして、この二ヶ月聞くことのできなかった声が聞こえた。


「お願いします!」


 倒れたまま叫ぶ。


「おう!任せとけ!」


 アニキはそう言って安心させるように笑いかけてきた。


sideユウジ


 丸太舟で爆走していたら。ブラッド達を見つけた。ブラッドが突進をくらい、パーティーが今にも瓦解しようとしている。ステータスに物を言わせ、猪──鑑定曰く、アングボア、と倒れているブラッドとの間に割り込み、骨棍棒を構えた。

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