第21話、リアル脱出ゲーム
「う、うーん」
寝苦しさで起きる。まるで人にのし掛かられるているかの様な息苦しさだ。
そして、目を開けて息苦しいわけだと納得した。
苦しさの理由は───アルテアが俺を抱き枕にしていたからである。
本来なら、どこのとは言わないが、アルテアの柔らかい感触を楽しめたのであろう。が、寝起きな上に、突然のことに頭が混乱して全くもって楽しむ余裕がない。
「いや、いや、どうしてこうなった‥‥でも重く感じたのはこ‥‥あれ?抱きしめてる力が強くなったぞ?いてっ、痛、いたたたたギブギブギブ!」
ベアハッグに耐えつつ、どうにかしてアルテアの寝顔を覗き込むと、不機嫌そうな顔をしていた。少しずつ体を動かし抱きしめてる手を緩ませ、あと少しでベアハッグから抜け出せるというところで、
「ん〜、ふわぁ、ゆーじぃ〜?」
「っ⁇」
一瞬思考がフリーズした。そしてその代償は、
「しまっ、」
再びベアハッグ再開だと⁈ギリギリと締め上げられる俺の体、今、ステータスプレートを開けばHPが刻一刻と削られている様子を見ることこができるだろう。ステータスを上げて無かったらもうすでに逝っていたやもしれん。ステータス‥‥そうか!閃いた俺は、この状況を打開する為の言詞を囁く。
「身体強化‥」
短い時間で抜け出さないと、俺の男子校生的な部分がマズいので持続時間と消費MPについては何も考えず、かなり強めに強化をかける。
そして、
「あっぶねぇー脱出成功‼︎」
果たして俺の男子校生は‥‥セーフ!アウト寄りだがセーフと言ったらセーフなのである。
そうこうしているうちに、アルテアが起き
「ど、どうした?」
聞いてみると、
「う〜ん、私の抱き枕〜?」
⁈ 寝ぼけているのか、目を擦りながらとんでも無いことを宣ってきた。返答に窮して固まっていると、
「あ、あわわわ」
どうやらお目覚めあそばされたようだ。俺はというと、アルテアの顔が真っ赤に染まっていくのをただ見つめていた。と、アルテアがこちらを向き、詰め寄りながら
「ゆ、ユウジ、わ、私なんか変なこと言ってました?言ってたらわしゅれて下さい‼︎」
と、舌を噛みながらそう捲し立てた。
「ど、どうどう。忘れるって言っても無理なものもあry‥‥」
「寝てる私に何をしたんですか⁈忘れてくれないというなら私にも考えがあります!」
「ほぅ?どんな考えだね?」
余裕綽綽と聞き返すと、
「私の拳で記憶を飛ばします‼︎」
「そうか、私の記憶をlim無限大に飛ばそうというのか‥っておい、ちょまてぇ〜それ洒落になんねぇ俺の記憶が飛ぶんじゃ無くて、俺の脳みそが発散するわ‼︎」
「じゃあ、忘れてくれましたか?」
首をコテンと傾けて聞いてくる。クソ、か、可愛い‥‥だが、それでも俺には言わねばならないことがある‼︎あるのだぁァァァァ‼︎
「忘れる?無理な話だね」
そう、忘れるなんて無理な話だ。忘れたと偽っても良かったが、やっぱり誠実さを売りにしている俺としては正直に答えるべきなんだ‼︎──断じてもうちょっと恥ずかしがる姿を見たかった訳では無い‼重要だからもう一度言おう。恥ずかしがる姿を見たかったからという訳では無い‼︎
手を広げ俺の記憶を飛ばさんと放たれるであろう拳を待ち構える。さぁ殴るなら殴れ!俺の記憶は発散せずに1に収束するぞ‼︎‥‥‥
あれ?何も来ない………手が疲れたからそろそろ降ろしていいかな、アルテアの方を見ると
「ユウジのことが‥‥いや、でもそんなこと‥そんなこと‥‥あうあぅぅ、ぅぅぅぅ」
頭を抱え撃沈していた。
「あ、あの〜、アルテアさ〜ん?大丈夫ですかー?」
「ぅぅぅぅ‥‥」
ダメだ。アルテアは壊れてしまったようだ。これは神に祈りの踊りを捧げなくていけないのだろうか?それにしてもここは空気がおいしーなーと現実逃避していると、
パチーン
いきなりそんな音が響き渡る。何ごとかと思い音の発生源──アルテアの方を見ると、アルテアの両頬がさっきとは違う赤さを帯びている。どうやら自分で自分の頬を叩いたようだ。そしてこちらへを向くと、
「遅くなってしまいましたね、さぁ、朝ごはんを食べましょう」
そう声をかけてきた。そこにはさっきまでの
朝からそんなこともあったがその後はアルテアが木の根に躓いて転びそうになったり、そんなアルテアに気を取られた男子校生約1名が木に正面衝突したり、段差で足を滑らせ頭を打ったりといろいろあったが何事もなく無事?に進み1日目の移動を終えたのだった。
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