第20話 新しい武器(仮)
「うぅ〜」
意識は戻ったは良いが、身体中が痛い。
「あ、起きましたか」
体を起こすとアルテア火の世話をしていた。
「剣、ありがとう」
お礼を言っておく。あの剣のおかげで勝てた様なもんだ。
「ところで、あの剣の銘、勝ったら教えてくれるんだけ?」
「剣の銘ですね。あの剣の銘は‥‥実は無いんですよ。貰い物でして元々持っていた方も剣としか呼んで無くて、聞いてみたんですが、銘は無いと‥」
なので銘はありません。とアルテアは静かに言った。
「そうか‥」
無いのか〜剣の銘を叫びながら剣を振り下ろす。とかやってみたかったんだけどな〜エク○カリバーとか、バルム○クみたいな感じで、
「いや〜それにしてもよく勝てたな俺」
本当我ながら良くやったよ、とか言っているとアルテアが言いにくそうに、ほんっと〜に言いにくそうに
「実はベヒーモスは、この樹海の奥地では弱い部類に入るんですよ」と言った。
えっ?マジ?
「なわけ、だってベヒーモスだよ?」
「ベヒーモスに何を期待しているのか分かりませんが、実際そうなんです」
「じ、じゃあ一番ヤバいのは?」
そう問いかけると、アルテアはしばし黙考し、
「最奥にいる祖龍ですね。仮に樹海の外に出てくれば周りの国は数時間で焦土と化します」
うわぁヤベー奴だ。ベヒーモスにギリギリで勝って喜んでいたのが恥ずかしい。思わず顔を覆う。それを見てアルテアは焦りながら、
「で、でも、この樹海が魔境なだけで、ベヒーモスも本来はかなり危険なモンスターでさよ」
と慰めてきた。でもね〜
「よし、決めたレベル上げしよう‼︎」
その決意はアルテアの
「その前に街で装備を揃えるべきだと思いますよ?いつまで他人の装備で頑張るつもりですか?」
という言葉で儚くも掻き消された。
ということで、これからの行動方針は樹海を出て街を目指すことに、と言っても下手な方向に進めば遠回り&奥地のヤバいモンスターが待ち受けているわけでその懸念をアルテアに話すと、笑顔で、飛びますか?とのお誘いを受けたが、短時間でもグロッキーだったというのにそれを樹海を抜けるまで続けたら〝嘔吐耐性〟とかが取得出来てしまいそうなので、丁重にお断りをする。
よくよくこの樹海について聞いてみると、ゴーレムを倒した後にでた河は樹海の奥地より流れ出ているとのことなのでその川に沿って歩く事にした。河を下るなら船かなんかを作ってそれに乗れば、ということを提案したが、
「死にますよ?あの河‥‥エクエスの大河の中にはベヒーモスより強いモンスターが大量にといますから‥‥歩いた方が安全です。ベヒーモスに追いかけられ河に落ちたと言っていましたが本当によく生きてましたよね」
と呆れられた。
斯くして明日からの方針が決まった。さっさと寝ようとすると、
「はい、出来ました」
と言って身長の半分程の白い棒というにはゴツい棍棒の様な物を差し出してきた。持つ部分は削られ持ちやすい太さになっている。
「これは?さっきまでなんか作っていると思ったがこれか」
「えぇ、街に着くまでの武器(笑)です。本当はこれに合わせてベヒーモスの皮で服を作ろうかと思ったのですが‥‥」
アルテアはそこまで言うとブフッ噴き出してしまった。
「これってベヒーモスの骨でできているって事?」
「ハァハァ、そ、そうです。それにベヒーモスの皮の服を合わせると何というか、その、野生味が解き放たれてしまって笑いが止まらなくなりそうだったので‥‥」
アルテアはそう言いながら再び笑い出してしまった。なので骨棍棒を掲げ
ホッ、ウホッホホホウ、ウホホッ?と超適当クロマニョン語で抗議の雄叫びをあげたら、アルテアは身を捩り、より一層笑い出してしまった。だいぶ苦しそうだ。
しばらく(2分程)経つとアルテアも漸く落ち着いてきたが、今度はジト目で睨まれていた。
「封印が解かれて以来最大のピンチでした。しかもそれをユウジにやられるとは‥‥」
そう言うと非常に良い笑顔で
「明日からの食料調達の時間が楽しみです♪是非ともさっき様な雄叫びを‥雄叫びを‥‥」
急に押し黙ったので何事かと思ってアルテアの方を見ると、アルテアがプルプルしていた。どうにか衝動を堪え
「‥‥頑張って毛皮の服も作り‥くふふふ、ホホホウって、あははは‥‥ハァハァ」──何かを言おうとしていたが、毛皮の服を着て骨棍棒を掲げて走り回る俺を想像してしまったのか、またもや笑い出してしまった。──そんなに変かよ。笑い過ぎて脇腹を攣っている人がいたが、
俺はもう寝ます‼︎
sideアルテア
笑い過ぎて脇腹を攣って悶えていたらユウジは寝てしまっていた。
確かにユウジは強くなった。だけどかなり心配事も依然とし多い。この世界の事についてユウジあまりにも無知なのだ。と言っても幾千の時を封印され過ごした私自身も似たようなものだが、兎に角これから多くの事を教えなくてはならない。もしかしたら一緒にいられる時間は存外短いのかもしれないから。
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