第17話 回復魔法を覚えよう!

「今日は治癒魔法を覚えてもらいます。やっぱり自分で怪我しているのを治すという感覚が大事なので‥‥ユウジさん?どうしてそんなに離れていらっしゃるのですか?どうぞ、こちらへ」

「い、いや、じゃあまずその剣仕舞ってくれない?絶対それでバッサリ手とか切られて早く傷を治しなさいってなるパターンんでしょこれ」

 そうアルテアはさっきから剣を片手に説明しているのだ。

「仕方ないですね。ほら」

 剣を宙に投げると、アルテアの手から離れた長剣はまるで溶けるかのように消えた。それを確認し、アルテアに近づいた瞬間

 

「〝エアカッター〟」


ヒュン


 不可視の風の刃が俺の左腕を二箇所、浅く切り裂いた。あまり深くない傷だが、血が流れる。そのうちの片方の傷をアルテアは

「〝ヒール〟」

回復魔法で治してみせた。

「ほら、頑張ってみてください?最初は魔力を使うという感覚が掴めないと思うので繰り返し頑張ってくださいね?」

「〝ヒール〟」シーン 何も起こらない。もう一度、

「〝ヒール〟」

「〝ヒール〟」

「〝ヒール〟」

やはり何も起こらない。ただ血が流れていく。助けを求めるような目でアルテアの方を見ると、

「まずは魔力を移動させられる様にするところからです」

とアドバイスをしてくれた。といっても正直魔力で何かするという感覚がわからない。まして身体強化ならまだしも魔力で傷口を治すというのは‥‥そうだ、スキルポイントで回復魔法とかそんな感じのを取れば良いんじゃね?そう思いステータスボードを開き回復魔法を取得しようとするが‥‥

「回復魔法が‥‥ない」

回復魔法の〝か〟の字もない。

「回復魔法はステータスボードからは取れませんよ?教会は中位、酷いところでは下位の回復魔法をかける代わりに高額のお布施を要求するくらいですから。いちいち怪我をするたびに駆け込んでいたらお金がいくらあっても足りません」

「取り敢えずもう一回、回復魔法をかけてくれないか?どんな感じか知りたい」

「確かに何回かかけられてイメージを掴んだ方がやりやすいかもしれませんね。左手を出してください」

言われた通り左手を差し出すと、アルテアは傷口に手を翳して、

「〝ヒール〟」

 その言葉とともに淡く白い光が傷口へと降り注ぎ‥‥

「すげぇ、傷口が治って‥‥」

 地球の医療レベルでは考えられない事だが、さっきまで血が滴っていた傷口があっという間に塞がった。

「こんな感じです。慣れてくれば離れた場所からでもできますが、先ずは使える様になる事からですね。さっきので掴めましたか?」  

 そんなことを言いながらまた左腕の同じところに〝エアカッター〟で傷をつけていく。ただし、今度は無言で、だ。

「無詠唱?」

「えぇ、慣れてくれば出来ます。でも、詠唱した方が効率も良いし、ミスも少ないです。さぁ、話してないで傷口を治さないと血がどんどん落ちていきますよ?」

 改めて俺はさっきかけてもらった〝ヒール〟の時の感覚を思い出しながら、

「〝ヒール〟」‥‥失敗した。淡い光が出てくるところまではいったが、その光が傷口に作用することはなかった。

「そういえば、血を流してるのにさっきから獣の1匹も現れないのはなんでだ?」

「匂いだけを通さない結界を張りました。なのでモンスターを呼び寄せたくなかったらあまり騒がないでください?」

「お、おう」───匂いだけを通さない結界の用途って‥‥殆どなくね?気を取り直して再び回復魔法の習得に励む。

「〝ヒール〟」

 今度もやはり光が出て傷口に降り注ぐが傷口に作用しない。どうしたものかと考えていると。

「傷口に魔力を染み込ませて傷口を塞いだり、痛みを和らげる様なイメージです」

「〝ヒール〟」あっ、気のせいかもしれないが少し治った気がした。

「その調子です」

 少しずつ傷を治してはまた〝エアカッター〟で傷をつけられ、このままだと変な性癖に目覚めそうだ。早く回復魔法を会得せねば。

 そして、ついに

「〝ヒール〟」

 その言霊は現実に干渉する力を以って、腕についた傷を癒した。ついにヒールを習得した。

「おめでとうございます」アルテアはそう言って微笑む。

 お礼を言いつつステータスプレートを開くと、


サワイ ユウジ レベル:43 種族:ヒト

HP:18600/20600 MP:4500/9050

VIT:12300 STR:9600 AGI:10600 DEX:11600 MEN:9600 INT:9600

固有スキル:薬草採取 lv5<発見><植物系毒耐性><薬草効果up Ⅰ>

スキル:言語理解、アイテムボックス、鑑定眼、遠走、毒耐性、受け身、魔力操作、物理防御lv14、剣術lv5 、回復魔法lv1

称号:異世界人、晩熟

SP:50


 魔力捜査と、回復魔法を習得していた。一人で感慨深くなっていると、横から

「明日は身体強化ですね」

 そう聞こえてきた。

 どうやら特訓の日々は未だ続く様だ。

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