第16話 膝枕Part 2

 寝る場所は倒したベヒーモスの巣を利用することにした。

 食事をして分かったことは、アルテアはかなりの健啖家だったようだ。使徒という特性故か食べなくても空腹感はあれどしにはしないらしく、外の世界に出るまでは何も食べていなかったが今は大量の炙り肉を頬張っている。そんな栄養はどこにと考え、そこそこの大きさがある胸部に目線がいき、こんなに栄養をとってこの大きさということは効率悪くね?‥‥なんてことを考えるや否や、

「なんか不快なことを思われた気がするのですが?」

 どうやら考えはお見通しだったらしく、絶対零度の視線を頂戴した。


 この雰囲気を打開すべく脳をフル回転させ、

「そういえば、なんでゴーレムを倒したら河の中に出たんだ?」

「おそらく、私を封印されていた場所が長い時の内に川に沈んだんでしょう。確かにあれには驚きました」

「そうだ、どうにかして俺も飛ぶことはできないか?流石にいつも抱えられて飛ぶのも、投げ飛ばされるのもご遠慮願いたいので」

「あっ、魔法を教えるのを忘れてましたね。明日から実際に使いそうなものを中心に叩き込みます。」

「ははは、お手柔らかに」

「ふふふ、それはユウジ次第ですよ?」


 そして数十分後、炎がパチパチと爆ぜる音をBGMに俺たちは睨み合っていた。

「これはユウジの肉です」ズイッ

「バカ言え、これはお・ま・え・の・肉だ」グイッ


 何を隠そう肉を押し付けあっ‥‥ゴホン譲り合っているのだ。どうしてこうなったかというと‥‥

「肉の量、多くないですか?」

「大丈夫、大丈夫。だってアルテア肉多めが良いんだろ?このぐらいいけるって」

 回想終了、あれっ?全面的に俺悪くね?仕方ない。かくなる上は‥‥道連れじゃけぇ

「分かった半分は俺が食うだからもうはんぶ‥『あーん』」


 あーん、だと⁈

 しかも丸ごと、コレは間接キスイベント⁈えーい、す、据え膳食わぬわぁぁ


パクリ、モグモグ


「うんまい」

実際、羞恥心で味なんてわかったもんじゃないが、ともかく俺の分は食べきった。後は放って置いてもアルテアがもう半分を食べて終わりだろう。


 だが、やられたからにはやり返す。それがユウジクオリティー。ステータス全開でアルテアから肉を奪い取り、

「ほれ、お返しだ。あーん」グヘヘへ。自分が仕掛けた行動で、羞恥に悶えるが良い‥


パクリ、モキュモキュ


 美味そうに食ってやがる。クソッ、こいつに羞恥心はないのか⁈

 このまま起きていたら、雰囲気に当てられて妙なことを口走りそうな気がしたので早めに寝ることにした。


 案の定、意識が高揚し、寝付くまでに時間がかかったが。


sideアルテア


 やっとユウジは寝ましたか。途中とても疲れている様子でしたから明日は少し遅い時間に起こすことにしましょう。そんなことを考えつつ、膝の上に乗せたユウジの頭を撫でながらその寝顔を観察する。思ったよりもまつ毛が長い。寝顔は意外に子供っぽい。それに‥‥それにしても‥‥

「ま、まさか、あーんをやり返されるとは‥‥」


 ユウジの恥ずかしがって食べられず困る姿が見たくて、あーんをしたのに

「恥ずかしがって食べないどころか‥」──そうユウジはほぼノータイムで食べて‥‥その後私にあ、あ、あーんを


ボフン


 顔をが真っ赤になっているのが自分でもわかる。あの時は、太腿を抓って何事もないように食べられたけど‥‥

「あーもう、明日起こすときどうしろって言うのよ⁈」

 だいたい、どうして私がユウジのことを‥‥確かに、解放してくれたのは嬉しかったけど‥‥


「ないない。だってユウジてば何も知らないし、弱いし‥でも、弱いながらも頑張ってるところが‥‥って、ちがぁうぅ‼︎」

「う〜ん」あっ、やばっ、起きそう。膝枕していたことがバレるのは‥‥


ガンッ


 あっ、慌てすぎてユウジの頭が膝から落ちた。起きてない?寝ていながらこんなに人を慌てさせるなんてユウジ‥‥恐ろし人ッ


「フガッ、スーッ、スーッ」セーフ!でも、私がこんなに慌てている時に呑気に寝ているだなんて、ちょっとイラッとしたので鼻を摘んでおきましょう


「フガッガガガ」

「プッ、変な声でたフガッガガガって、フガッガガガって」


 あ〜しばらく眠れそうにありませんね。しばらくユウジの寝顔鑑賞会でも開きましょう。

 そんなことをして夜遅くまで起きていたため翌朝ユウジより先に起きることができず、先に起きたユウジによって寝顔を堪能されていたのは別のお話。 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る