第15話 外の世界
ガボガボガボ
そんな音しか聞こえない。
突然ですが、俺は今沈んでいます。どうしてでしょう?
それは‥‥‥なんでだろう俺が知りたいよ‼︎
白い光に飲み込まれた!と思ったら次の瞬間水の中って‥‥あんまりだろ‼︎
ガクンという衝撃そして急に引っ張り上げられた。どうやらアルテアが腹に手を回し引き上げてくれた様だ。そのまま水面へと上昇し、
ぷはぁぁ
久々の外の空気、存分に吸い込み、そして辺りを見渡す。
「うわぁ」
見渡す限りの大河、一番近い岸まででもかなり長い距離を泳ぐ必要がありそうだと、げんなりしていた時、
「掴まって」
そう言われて慌てて腹に回されていた手を掴むと、アルテアはそのまま‥‥
バサッ
背中に生えた二対の翼を羽ばたかせ、空を飛んだ。その間、俺はこの翼って実際飛ぶためのものだったのか!とか、上から見る景色は綺麗だとか、‥‥‥全く思っていなかった。 ただ、「ちょい、タンマ、まっ‥て、早すぎ〜落ちる〜、頼むから安全運転でぇぇ」とか叫んでいた。ついでに次、こんな機会が訪れる前に、なんらかの飛ぶ手段を確保することを心に決めた。
「まったく、情けないですね」
アルテアの岸についてグロッキーになった俺を見ての第一声がそれである。この
「飛んでいる時の元気はどうしたんですか?」
さらにニヤニヤしながら聞いてくる。アホか、そんなもんないわ。と言おうか迷っていると、
「〝キュア〟」
スッと気持ち悪さが引いていく。
「これで治りましたか、たか?」
ニヤニヤしながら頬をツンツンしてくる。イラァッとしてきて‥‥
ゴッ
拳骨を一発、
何気に初めてアルテアにダメージ与えたんじゃね?とか考えていると、
「酷くないですか?折角治してあげたのに、ヨヨヨヨ」と騒ぎ出した。
「治したも何も元々お前のせいだろ!てかヨヨヨヨって、実際そうやる奴初めて見たわ」
「う〜、こんなところで私の初めてが〜」
「い、言い方‥‥もっと他の言い方はないのか?」
「本当のことじゃないですか!外の世界に出て初めてのダメージが味方からの拳骨だなんて、責任とってください。具体的には食料調達とか」
何を要求されるかと思ったらそんなことか。
「ところで今日どこで寝よう。安全な場所探さないと‥‥」
まだ夜になるまで時間は有るが探し始めていた方が良いだろう。特に焦って探してアイツに見つかるなんてことがあったら‥‥‥
「って、いたぁぁぁぁ」
向こう岸に奴‥‥ベヒーモスがいた。逃げるぞ、と言おうとして隣を見ると、
「あっ、いましたね。今夜のメインディッシュはこれで決まりです♪」
凄く嬉しそうな顔をしていた。
「メ、メメメ、メインディッシュ?ヤツが?俺たちが奴のメインディッシュじゃなくて?」
「ほら、さっさと狩りますよ?血の匂いで他のモンスターが呼び寄せられても面倒なので」
そう言うと、襟首を掴んだと思うと、俺を担ぎ、そのまま上へと大きく跳び、俺を掴んでいる方の腕を振りかぶり‥‥‥おい待て何をするつもりだ? ヤメロォぉぉ
「逝ってらっしゃい♡」
ちょ、おま、今漢字違ったよね?逝ってらっしゃいって死ねと?
「ヤメロォぉ‼︎チクショウ、アイツあり得ねぇぇぇ」
バヒュン、そんな音を立てて放たれた砲弾(俺)は途中、目から点々と雫を振り撒き、そのまま猛烈なスピードでベヒーモスの頭へと突き進み‥‥
ゴガッ
ベヒーモスとぶつかった。幸い足を先頭に飛んでいったのでベヒーモスの頭と俺の頭がごっつんこという事態は免れた‥‥‥‥一瞬、足を前にして投げたのは優しさから?という考えが頭をよぎったが、そんなこと考えるくらいならそもそも人を投げようなんて、狂った事はしない。とすぐにその考えを打ち消した。
不幸にも、ぶつかられたベヒーモスの方はというと、
ツンツン
「‥‥あれっ?死んでる‥首が変な方向に曲がっている‥‥俺は‥‥俺は、お前と正々堂々と戦い決着をつけたかった。なのに‥‥なのに‥‥誰が‥‥誰がこんな酷いことを‥‥」
いろいろ言っているが、結論から言うと
「さすがですユウジ、瞬殺ですね♪」
ベヒーモス殺獣?事件の真犯人が現れた。犯人は俺じゃない‥‥俺は‥俺は利用されたのだ‼︎だから俺悪くないよね?
「人を投げるとかヒドくね?せめてさっきみたいに運ぼうよ」そんな愚痴を言うと、
「さっき運ばれるくらいなら、投げ飛ばされて移動した方がマシだと言ってましたよね?」
「そんなこと、誰が言って‥‥俺が言ってたぁぁ‼︎」
「それに、頭を先頭にして投げるのは可哀想だと思ったのでちゃんと足を先頭にしてあげたんですよ?お礼として肉の取り分の増量を求めます」
ごめんなさい
「さっ、早く解体しましょう♪」
アルテアはそう言って解体を始めてしまう。アルテアに反省の色はなかった‥‥
やっぱ、どうでも良い気がしてきた。勝ったからよし、ということにしよう。
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