第13話 訓練の終わりと門番と
今日もいつものようにアルテアにのされ、地面に転がっていると
「もうこのくらいで大丈夫ですね」そう、唐突に言われた。
「大丈夫とは?」
「もうここから出て大丈夫そうということです」
「えっ?出れるの?」
マジか早く言って欲しかった。
「当たり前じゃないですか。そんなことも知らずにここへ‥‥そうでしたね。何も知らなかったんでしたね」
少し懐かしむ様なその口調はまるで別れる前の様な少ししんみりとした雰囲気を醸し出していて‥‥
「‥‥俺と一緒に来てくれませんか?」
思わずそう口にしていた。
「‥‥‥前にも言いましたが、私のせいでこの世界に連れてこられたのですよ?」
「知ってる。それでも」
「たくさん‥‥迷惑をかけるかもしれませんよ?」
「俺の方がこれまで迷惑かけてきたし、多分これからも迷惑をかけ続けると思う」
「‥‥私は外の世界に出るのはほんとにほんっと〜に久しぶりなので、お役に立てないかもしれませんよ?」
「この世界についてはほとんど知らない者同士だ」
「‥‥‥」
「もう一度言う。俺と、来てくれ」
そう言って右手を差し出す。
次の瞬間を俺は生涯忘れることはないだろう
「もう、仕方ないですね」
頬から流れ落ちる涙を拭いながら俺の手をとったアルテアは安っぽく聞こえるかもしれないが、本当に美しかった。
結局話し合い、主発は明日にすることにした。俺にはそれまでにやっておかなくてはならないことがある。それは
幸い〝実〟はここ1ヶ月ほとんどそれを食べて生活してきてきたと言うのに殆どなくなっていない。どころか少し増えてすらいる様にも思えるくらいだ。なので、手分けして実を集めアイテムボックスに放り込む。
鍛え上げた俺のステータスが唸りをあげるゼェ‼︎とステータスをフルに活かし猛スピードで実を収穫しながら横を見ると、
アルテアが目を瞑り、立っていた。手伝ってくれよと言おうとして、はたと気づいた。アルテアの周りで魔法が使えない俺でも分かる程濃密な魔力が渦巻いているのを。思わず手を止めて見入っていると、
ゆっくりと目を開き
『〝集え〟』と一言、しかしその効果は劇的だった。
ガサガサガサッ
ほとんど全方向からそんな音がしたかと思うと次の瞬間、
「実が‥‥」
そう、木に残っていた実が全て木から離れ空へと登り‥‥‥
「そこ、危ないですよ?」
そんな声とともに上から大量の実がゆっくりと降りてくるのが見えた。なるほどこれを片っ端からキャッチしてアイテムボックスに放り込めば良いのか、そう思った俺はアルテアが何か言っているが聞こえなかったことにして、手を上にかざし身構える。今度こそ俺のステータスが唸るぜぇぇ
結果、俺は怒られていた。しかもまたいつかの様に正座で、だ。
「私、危ないってあれほど警告しましたよね?どうして逃げなかったんですか?というよりあんな数の実をあなたのステータスでキャッチし切れるとでも思ったのですか?」
俺は危うく撲殺されそうになっていた。もちろん犯人はアルテア、ではなく空から降って来た無数の実である。最初の数個はよかっただが少しずつキャッチしきれなかった実が地面に落ちて、そしてそれの上に足を下ろしてしまい、あっ、と思ったときにはすでに体勢は崩れ上から落ちてくる実をキャッチすることはおろか回避すら出来なくなっていて‥‥あっという間に実の山に埋もれてしまったのだ。あの山から俺を発掘してくれたアルテアには本当に感謝したい。ちなみにHPは半分近く削れていた。
お説教タイムも無事?終わりを迎え俺たちは早めに寝ることにした。と言ってもいつも通り草地の上に雑魚寝寝だが、
そして翌朝、出発の時が来た。ここで俺は前から思っていた質問をする。
「ところで、ここからどうやって出られるんだ?」
そう、ここは、見渡す限り出口らしきものは無い。ではどうやって?という質問に対し
アルテアは明確な答えを示した‥‥破壊を以って
突如煙る様なスピードで動いたアルテアは石像だった頃に自分が乗っていた台座を殴った。
石の台が粉々に粉砕し、中から出て来たのは‥‥
「ゴーレムプフェルトナー?」
棍棒を持った高さ3メートルくらいのゴーレムだった
「門番という意味です。さぁ来ますよ。」
その言葉とほぼ同じタイミングでゴーレムは棍棒で殴りかかってきた。
だが、
「遅いっ」
そんなに速く無いので避けやすい。が、一度距離をとる。そして、今まで気になっていた質問をパート2を
「そういえばアルテアって武器は何使うんだ?」
「それ、戦闘中に聞くことですか?」
ゴーレムの方を見ながらも、こちらを睨んでくる。
器用な奴め‥‥
「私は、剣と魔法がメインで素手での格闘戦が一番苦手です」
そういうが早いか、どこからともなく長剣を取り出した。そしておもむろにゴーレムの方へ歩いて行くと、
「危な‥‥」
案の定ゴーレムは棍棒で攻撃するが、フワリと翼をはためかせ、それを回避し、剣を振るい瞬く間にゴーレムの棍棒を細かく切断した───その刃は金色に輝いていた。そして、再び翼をはためかせ、こちらへと戻って来ると、
「さぁ、あなたの番ですよ!実践訓練です‼︎ヤバそうになったら助けますので、ちゃんと下がるんですよ?」
どうやら俺の番らしい。ここまでお膳立てさせておいて俺が何もしないのは‥‥
「おっしゃぁぁ、やったるぜぇぇぇ」
こうしてゴーレムとの勝負が始まった。
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