第12話 膝枕

 いつもの場所でいつものように俺はアルテアと少し離れた位置で向かい会い剣を構えていた。ただいつもと違うのはアルテアが左手の五指を開いて前へ出し、右拳引いた構え、いつか漫画で見たパンクラチオン風の構えをしていることだ。

 

 剣を手に駆ける。


 間合いも相手の行動も読めない。ただ苦い〝実〟を食べ鍛えられたステータスを頼りに斬りかかる。

 

 

 ゾワッ


 ふっと感じたその感覚はいつもの殴り倒される直前の感覚に似ていて‥‥


「ら゛ぁ゛ぁぁ」


 裂帛の気合いと共に全力で地を蹴り、左斜め後ろへと跳ぶ、駆けてきた速度の分、体に負担がかかり


そして体が軋む。そして、


ブォン


 超高速の踏み込みと共に放たれた右手の拳打がそんな音を立てながら右頬を掠めるが、


「かわしたぁぁー」


 そして、がら空きの胴を目掛けて剣を振るい、


突如、


顎に衝撃が‥‥‥右手の裏拳?


追撃を恐れ、慌てて後ろに下がろうとするが‥‥


「急に地面が傾いて?」


ドサリ


どこかでそんな音がした。


 そして、心配そうな顔をして駆け寄るアルテアの姿が見え   い      し           

        き                     が       

    と        

           お       の        い          

      て‥‥‥


 



 

 髪を優しく撫でられる感触で気がついたら後頭部には柔らかい感触が広がっていた。視界には何ともいえない光景が広がっていた。何がとは言わないが意外にあるんだなぁ〜とか、まさかっ、これはあの膝枕というやつか⁈といったバカなことを考えていたら、


「起きましたか?」そんな声が降って来た。

 体を起こそうとするが手で制される。

「まだ休んでいて下さい。今日のところはここまでにしましょう」

「悪い」と言って再び後頭部の柔らかい感触に実を委ねる。

「ごめんなさいよりもありがとうっていわれた方が嬉しいものですよ?」

「‥‥ありがとう‥」そう口にすると、

「‥‥‥‥」何も返ってこないので頭の位置を調整するフリをして顔を見上げると顔が赤くになっていた。そして、そのまま見ていると目が合った。

「な、何ですか?」顔をさらに赤くしてそう言うアルテアの破壊力が凄過ぎて、

「い、いやぁ〜?べべべべ、べっつにぃぃ〜?」思わず言ってて自分でもナイワーと思う反応をしてしまった。それでも、あぅあぅぅ、とか言わなかった辺り自分でも相当頑張ったと思う。

 そんな甘い雰囲気は

「変なこと言う口はこれで黙って貰います‼︎」と、顔をこれでもかと言うくらい紅に染めたアルテアが俺の口にいつもの〝実〟を突っ込んできたことにより霧散した。正確にいうと、さっきまでの雰囲気の甘さが〝実〟の苦さに押し流されたというところだ。苦さに耐えつつどうにか飲み込むと、

「つ、次です。ほら、あ、あーん」次の〝実〟を口元に持って来た。

 釣られて口を開くと次の〝実〟を口の中に入れてくる。



 その後、暫くバカップル?みたいな食べさせ合い(一方通行)は続いた。



 今日は良いことがあった。そう素直に喜びたかった。喜べたはずなのだ‥‥‥〝実〟がこんなにも苦くなければ‥‥パタリ


「ユウジさーん⁈」アルテアがなんか言っているが今日はもう寝ます。


 おやすみ!

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