第10話 謝罪のわけ

 えっ?なに?俺なんかされた?もし俺の頭の中を覗けたらこうなっていたことだろう。正直、相当混乱している。とはいえずっと謝ったままにしておくのもどうかと思うし、何で謝られているのか分からかったので、

「えっと、何で謝られているんだ?名前教えてくれない?」

 そう言うと、彼女は頭を上げ、

「私の名はアルテア。私達のせいで‥‥私達が負けたせいで貴方はこの世界に召喚されたのです」

 ん?それって、


「それってアルテアが使徒ってことと何か関係がある?」

 気になっていたことを聞いてみると、

 アルテアは目を見開き、驚きを多分に含んだ声で、

「召喚された人は鑑定眼を持つとは聞いてましたが、本当に持っているんですね」





 そうして、数十分後、俺はアルテアに怒られていた。しかも正座で、だ。


 怒られながらどうしてこうなったのか思い返す。


「鑑定眼ってそんなに便利なものなのか?だって種族しか見れないじゃん」

「ユウジさん、いえユウジ。貴方もしかして鑑定眼の使い方がわかっていませんか?いえ、答えなくていいです。分かっていないことがよ〜く分かりましたので。さぁ、説明いたしますのでそこに正座してください?」

「ぎ、逆に鑑定眼で何が分かるんだ?」

 あまりの剣幕に何で正座?って聞くことも、逆らうこともできず正座してそう言うと、

「サワイ ユウジ レベル:6 種族:ヒト

HP:150/150 MP:85/85 VIT:41 STR:55 AGI:55 DEX:55 MEN:41 INT:41ってところでしょうか?召喚されたにしてはステータスが低くないですか?取り敢えず、確認してみてください」

 ステータスが低い、は余計なお世話だと思いつつ促されるままにステータスプレートを開くと、

サワイ ユウジ レベル:6 種族:ヒト

HP:150/150 MP:85/85

VIT:41 STR:55 AGI:55 DEX:55 MEN:41 INT:41

固有スキル:薬草採取 lv5<発見><植物系毒耐性><薬草効果up Ⅰ>

スキル:言語理解、アイテムボックス、鑑定眼、身体強化lv4

称号:異世界人、晩熟

SP:40


「うひゃっ」

 思わず変な声が出た。ピッタリだ。

「スキルと称号以外なら見ることができるんですよ。もっともレベルやステータスの差が酷かったり隠蔽しているなら別ですが。そもそも隠蔽していないなんて不用心過ぎです。それで?本当はどうやってここに来たのですか?正直に答えてください」

 なんとなくこれ以上嘘を重ねるのはバレた時大変なことになる気がしたので、正直に答えたところ今に至る。


 要するに俺の行動は自殺行為だったらしい。なんかそんな気はしていたが。


「決めました。まずユウジにはスキルの使い方、戦闘技術を叩き込みます。このままではあなたはそう遠く無いうちに死にますよ?」     

 そう言われては断れない。というか渡に船の状況なのでこちらこそお願いしますと言って早速話に耳を傾ける。


 結果、スキルは同じ派生スキルでも、派生元のスキルのレベルが高いほど効果は大きいことが分かった。鑑定眼の使い方も分かった。だが、アルテアとはレベル差もステータス差もありすぎてステータスが見えなかった。しかも、ここには悠二自身とアルテアしかいないので鑑定眼の実践はできなかった。


 戦い方の方は、

 愛剣(おそらく量産品)を手に直立しているティナに斬りかかる。が、あっさり躱され、

「遅過ぎです」


 バキャア 脇腹に肘が入る。そして足払いをまともにくらいその場でひっくり返る

その後も、

「無駄な動きが多すぎです」


グシャァ


あちょ、まっ


バキッ


やめっ


メキョッ


以後、見苦しい音と悲鳴が続く。

 どうだったか聞いたところによると、ステータスが低すぎて戦い方以前の問題らしい。こればかりはと思っていると、

「そういえば召喚されたなら固有スキルがあるはずです。固有スキルは何ですか?」

「薬草採取 lv5。発見、植物系毒耐性、薬草効果up Ⅰが派生してる。もしかしてアルテアさん固有スキルが戦闘用って期待してましたか?」

「‥‥‥」

 えっ?無視?思わず横顔を見る。

「おーい」

「‥‥あぁ、すいません少し考え事をしてました。さっきまでのステータスが低いなりの戦い方を教えようとしたことが無駄になったなぁ〜って考えてました」

 そう言うとゆらぁ〜っと幽鬼のように立ち上がり、おもむろに近くの木まで歩いていくと、実を収穫し、消えた‥‥と思ったら目の前に立っていただと⁈

 そして、とても良い笑顔になり、何か言おうと開けた口の中に木の実を突っ込んできた。反射的に実を噛み、そしてその行為を深く後悔した。


「ぬぅいっがー」

 苦い苦いとてつもなく苦い。これホントに食い物?

 吐き出すのは許してくれなそうなので、無理矢理飲みこむ。


「いきなり何するんですか。あれホントに食べていいものなんですか?」

 文句を言うと、

「毒があるので、普通の人が食べたら間違いなく死にますね」


 ちょっとぉぉ〜ナニ食わせてくれちゃってるんですか〜普通に気持ち悪くなって来たじゃないですか〜ですか〜ですか〜そんな悲鳴じみた声が木霊したとかしなかったとか。


「ステータス見てみてください」

 アルテアはそれに取り合わずそう言ってくる。

渋々ステータスプレートを開くと、


サワキ ユウジ レベル:6 種族:ヒト

HP:150/250 MP:85/85

VIT:41 STR:55 AGI:55 DEX:55 MEN:41 INT:41

固有スキル:薬草採取 lv5<発見><植物系毒耐性><薬草効果up Ⅰ>

スキル:言語理解、アイテムボックス、鑑定眼、身体強化lv4

称号:異世界人、晩熟

SP:40


HPの最大値が増えていた。

「HPの最大値が増えてますよね?幸いこの手の植物はここにはたくさん生えているので、これからしばらく悠二さんにはこの方法でステータスを底上げしてもらいます。それと並行して戦い方も叩き込みますので、かなりスパルタですけど覚悟しておいてくださいね?」 

 そう言いながら首を傾げた為、可愛さが溢れ出し、思わず頷いてしまったが、その後すぐに後悔するのは別の話である。

 こうして地獄?の日々が始まった。

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