第8話 出会い1
ウサギ狩りは今のレベルでは厳しいと分かったのでしばらくゴブリン狩りなどの依頼をこなしつつレベル上げに勤しむことにした。もっともこれまでの感じからレベルが上がろうがステータスはあまり変わらなかったのでスキルを増やす&強化を目的とするものだが。とにかくゴブリンを倒しながら森の奥地を向かっていく。
最悪道に迷う可能性もあったので食料は事前に買い込んでアイテムボックスに放り込んである。
進んではゴブリンを斬り
またゴブリンを斬り
さらに斬り
そして斬ったッ
そうして少し開けた場所に出て後悔した。
ゴブリンキャスターにゴブリンアーチャーにゴブリンナイト。ちょっと最後のゴブリンナイトにはゴブリンセイバーを名乗らないか打診してみたいところだ。聖杯◯争が出来る?
なんて現実逃避したは良いがこれはかなり危ない。見つかったら多分いや、間違いなく死ぬ。昨日のウサギなんて目じゃないくらいヤバい。この前のように枝を踏むなんてことをしないように引き返す。
「いゃ〜危なかったーここまでくれば大丈夫か」
改めて樹海の奥へと進む。さっきと違ってゴブリンの数が少ないが、時々ボブゴブリンなんてゴブリンの上位種が出てくるものの一対一ならば多少時間がかかれど大して苦戦せずに倒すことができた。
そして再び開けた場所にでて‥‥
そこで彼は圧倒された。
かなり距離があるのに空が降って来たと思わせるようなプレッシャー、ともすれば物理的な力を持ちそうな、気を抜けばそのまま意識を持っていかれそうな圧がかかる。
しかしそれは威嚇のためのものでは無く、ただそこに存在するだけで放たれたものだ。
筋肉に覆われた逞しい四肢、もはや凶器。そう形容するしか無いほど鋭い爪、太くしなやかな尻尾、そして何より頭に生えた巨大な二本角がその獣の強さを何より雄弁に表していた。
その四本足のプレッシャーの主、鑑定眼によると、ベヒーモスは血に塗れながらも悠然とそこに佇んでいた。
その血は恐らく、かの者の足元に転がっている肉片のものだろう。
これはヤバいそんな意識すらも起こらない。戦うなど烏滸がましい。
見つかれば、逃げても後ろから吹き飛ばされ一撃で命が散る。そんな幻想さえ浮かぶ。
音を立てずゆっくりと後退しようとした時それは起こった。
ベヒーモスの視線が悠二を捉えたのだ。
がむしゃらに走る
勿論〝遠走〟はフル活用だクソッタレぇぇー
木々の間を通りデコボコした地面につまづき転がりながらも走る。
幸いベヒーモスはあの圧倒的な圧の割に動きは遅く、その巨体には木々が障害物になり、満足にスピードを出せていない。しかし,それでも悠二を倍する速度でソレは迫る。
加えてベヒーモスによって根元からへし折られた木々がぶっ飛んでくる。
「うわぁぁぁぁ」
半狂乱になりながら走る。
三たび開けた場所へ。さっきとは別の場所だが、ゴブリン達がいた。
後ろから迫り来るソレに追いつかれないようゴブリンなんて気にせず群れの真ん中を突っ切る。
グギャャ
ぐぁっ
ゴブリンナイトに浅く腕を切られる。思わず痛みで減速してしまう。
もうすぐ後ろにソレは迫っている
ここまでか
その時
グォォォォ
グギャャ、グギャ
ベヒーモスとゴブリン達の
望外の幸運だが、大した時間稼ぎにはなりそうもない。現にベヒーモスの前足の一振りで数匹のゴブリンが宙を舞う。一方ゴブリンの攻撃は当たれど全く効いている様子は無い。が、逃げる時間ができたのは確かだ。これ幸いにと走る。
そして、崖に出た。下には大きな川が流れている。川の中にも当然魔物はいるだろう。
刹那の逡巡を経て別の方向に逃げようとした矢先、
グルォォォォ
ついにソレは追いついた。更なる血に塗れながら。
そしてその獣の王とも言うべき生物の咆哮を受けた少年は足を踏み外し‥‥‥
そのまま崖の下へと落ちていった。
獣の王は悠然と振り返り森の中へと姿を消した。
残ったのは辺り一面に立ち込める死臭と破壊の跡だけだった。
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