第2話 side 彰 召喚されたらしい?

side 彰 

 

 どうやら俺たちは異世界に連れてこられたらしい。俺たちというのも、王宮と思しき場所に召喚されたのは親友の悠二を除くクラスメイト全員だ。奴だけがいない。そういえばあいつ教室から出てたっけ?巻き込まれてないなら良いが‥‥

 辺りをを見渡すと白地に金糸の刺繍を施した法衣を纏った神官らしき人達が祈る様な姿勢でこちらを向いている。その後ろには王座に腰掛けた王と貴族が‥‥と観察していると、

「ようこそ勇者諸君」

 他の神官よりも金糸が多い一際目立つ服を纏い、これまた豪華な錫杖を持った長い白髪の老人が声を上げる。

「よくぞ私達の求めに応じてくださった。私はこの枢機卿のマイニューです」

 ん?応じたも何も勝手に連れ去られたのだが‥‥

「この国は、いや、我々人間は今にも魔族と魔物により滅ぼされようとしている。人間は団結してこれに立ち向かう必要がある。なのに他の国は目先の利益に囚われ、この国を、エーゼンハルト皇国を攻撃している」

 そこで一旦言葉を切ったマイニューは大仰な動作で手を広げ、

「どうか、この国を救ってくれないだろうか」

 いかにもテンプレな、そして、実際聞くと怪しさ極まりない言葉を放り込んできた。

 今の言葉に反応して周囲では話が始まった。と言っても話し合いと呼べるほどのものでは無く、

「わ、私たち戦争に行くの?」とか、「家に帰してよぉ〜」とか「ふざけんな!」等々だったのだが、次第に「この国の人も困っているはずだ。助けないと」とか「こんな時に目先の利益に囚われて戦争するなんて許せない」

 と言った意見が出てきて‥‥‥‥

 咄嗟にこのままではマイニューの良い様に流されると思い反論しようとして、

「あれ?俺は何を言おうと‥‥」

 そして、彰自身おかしいと思いながらも、何故かマイニューの言う通りに皇国を助けるべきだと言う考えが頭をよぎり‥‥‥‥最後に思ったのは、悠二、お前がここにいなくて良かった‥‥‥

 結局、クラスメイト全員が時間差はあれど、皇国を助けるという意思を表明すると、マイニュー達の誘導に従い、大広間らしき場所にきた。

 物珍しさに任せて、辺りを見渡していると、大柄な男、騎士団長のロシム=ファウルトが前に出てきて、

「俺からはステータスの説明をさせてもらう。」

 ステータスという言葉に反応して、一部の男子がザワザワし始める。

「ステータスオープンというとステータスプレートが出てくる。これは、最も信用できる身分証明の仕方だ」

「ステータスの内容は全てこっちに教えてくれよ?明日からの訓練のメニューはそれを元にして決めるから」

 取り敢えず言われた通りステータスプレートを開くと、


キゼ アキラ 種族:ヒト レベル1

HP:350/350 MP:150/150

VIT:180 STR:180 AGI:180 DEX:150 MEN:150 INT:150

固有スキル:斬術

スキル:言語理解、アイテムボックス、鑑定眼、剣技 lv1、身体強化 lv1

称号:異世界人、早熟、勇者、神の祝福を受けし者

SP:0


これは‥‥ステータス的には良いのか?と思っていると、

「どうせお前らのことだ。レベル1なのに100越えのステータスもあるんだろう。普通はレベル1だと各ステータス20前後なんだがな、羨ましい奴等め」

 ロシムが豪快に笑う。

 全員がステータスの報告を終えると、泊まる部屋などに着いて説明を受けた後、食事会になった。食事会の場で明日からの訓練の講師が紹介された。大体想像はついていたがロシムが講師だった。


 翌日、彰たちは全員地に伏していた。まさに死屍累々という言葉が当てはまる様なことになったのは、

「どうした‼︎もう限界か‼︎」

 何を隠そうこの訓練馬鹿ロシムのせいだ。もっともロシムとしては、どうせ彰たちが戦争に参加するのが避けられないなら、せめて実戦向けのトレーニングを重視し、少しでも実戦に慣れた状態で戦場に送り出したいという気持ちからであったが。


 そして、3日後彰たちは皇都からほど近いダンジョンにいた。

「今日からダンジョンでの実践訓練だ。目標は取り敢えず15階層までだ!俺たちがつくとはいえダンジョンの中では危険が伴う。気を抜くなよ?」

 ロシムはそう言うと事前に決めていた隊列を組ませダンジョンの中に入っていった。



「うりゃぁぁ」

 裂帛の気合いが迸る。その気合いとともに振われた刀は気合いの主、彰に飛びかかってきたコボルトを切り裂いた。

「よぉうし、良くやった」

 ロシムの声が響く。ここは迷宮の11階層。1から10階層までにいたゴブの姿はなくなり、コボルトがうろつく11階層に入る頃には、彰たちもだいぶ実戦に慣れてきた。

「それにしてもこの刀よく切れるな」

 彰の得物は刀で、城の宝物庫にあったものをロシムから渡されたのだ。実は、ふらっと現れた男

が当時の高名な鍛冶屋に製法を教え、作らせたとかいうのはまた別の話である。そうこうしているうちに目標の15層に着き、帰途に着く。ちなみに彰のステータスは


キゼ アキラ 種族:人間 レベル4

HP:835/3500 MP:235/1050

VIT:1800 STR:1800 AGI:1800 DEX:1800 MEN:1500 INT:1500

固有スキル:斬術

スキル:言語理解、アイテムボックス、剣技 lv3、身体強化 lv3

称号:異世界人、早熟、勇者、神の祝福を受けし者

SP:40


 ステータスの伸びはかなり良かったりする。皇国最強のロシムのステータスが平均3000くらいだが、レベル5にして既に1500を超えた部分もあり、ステータス的に追いつくのはそう遠くはなさそうだ。無論他のクラスメイトも、彰ほどでは無く、さらに多少の差異はあれど、似た様なものなので十分チートである。


ダンジョンの近くの宿泊場所に着くなりロシムは

「明日は20階層まで目指すからな‼︎しっかり休めよ?」

 と言い、階段の方へ去っていった。どうやらしばらくはこのダンジョン生活が続くらしい。









 そういえば、どうしてこの国を救おうと思ったのだろう。



 少し考えたがこれ以上考えるのは〝してはいけないこと〟な気がしたので考えるのをやめる。

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