第9話
やっと目的地に着いた。10月にしては珍しく激しく照りつける太陽の光を身体に浴びながら水族館までの道を歩く。
到着して受け付けを済ませると中に入った。人が多かったから、はぐれないように瑠輝と手を繋いで、アシカショーの会場に向かう。瑠輝は時折「わー!」とか「凄い」と声をあげながら楽しそうにスマホで撮影していた。
アシカショーが終わると水族館の中を見て回る。チンアナゴの所にはカップルが行列を作っていた。
「ねぇサキラ。あそこ人がいっぱいいるよ。何がいるんだろう?」
「チンアナゴだよ。カップルで見ると幸せになれるんだって」そう言うと瑠輝は嬉しそうに微笑んだ。
暫く他の場所を回っているとチンアナゴの行列が少なくなっていた。今がチャンスとばかりに最後尾に並ぶ。
列が進み始めると俺はワクワクしてきた。隣で楽しそうな顔をしている瑠輝を見ると水族館に来て良かったと思った。本当は水族館デートは人が多いから辞めようかと思っていた。それでも瑠輝が楽しそうにしてくれていたから来て良かったと心から思えた。
やっと俺達の順番になった。初めて見る本物のチンアナゴに興奮する。水槽に表示されている案内を見ると
"ここで愛を誓ったカップルは幸せになれるという言い伝えがあります"と書かれていた
「瑠輝。俺こんなに人を好きになったの初めてなんだ。今までは嫌になれば別れればいいって簡単に思ってた。でも瑠輝とは別れたくない。ケンカしてもずっと一緒にいたい。ただ一緒に居るだけで幸せで。瑠輝の笑顔が俺の幸せなんだって思った。この気持ちは全部瑠輝が教えてくれたんだ。だから、これからもずっと俺の隣にいてください」
そう言った俺に瑠輝は笑顔で答えてくれた。
「ずっと隣にいるよ」
俺はこの笑顔を絶対に守ると決めたんだ。それなのに俺が瑠輝から笑顔を奪ってしまうなんて…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます