第8話

10月10日。俺は朝からソワソワしていた。だって今日は瑠輝の誕生日だから。本当は那月の時みたいにみんなでパーティをする計画もあったけど俺が断った。今日だけは瑠輝と2人で過ごしたいんだ。



瑠輝とは10時に駅前で待ち合わせして隣町の水族館に行く。下調べはバッチリだ。カップルで見ると幸せになれるって噂のチンアナゴがいるらしい。


デートがこんなに待ちきれないなんて生まれて初めての経験だった。

準備が終わって家を出る。いつも見ている景色なのに瑠輝と付き合うようになってから不思議といつもより綺麗に見える。


俺の家から待ち合わせの駅までは歩いて10分くらいだ。駅までの道を歩きながら那月にLINEする


『那月。今日パーティ断ってごめんな』パーティを計画してくれていた那月に謝罪のLINEを送る

『気にすんなよ!誕生日くらい2人で過ごしたいって気持ちわかるし!瑠輝ちゃん楽しませてやれよ』

心の中で那月にお礼を言ってスマホをポケットにしまう。



駅前につくと瑠輝はまだ来ていなかった。駅前の大きな時計を確認すると、まだ9時30分だった。スマホを取り出して今から行く予定の水族館のホームページを開く。俺は生き物が好きって訳じゃないけど瑠輝と一緒なら楽しめそうだ。



「サキラ待たせちゃってごめんね!」顔をあげると目の前に瑠輝がいた。いつも可愛いけど今日は特に可愛かった。俺の為にオシャレしてくれてるのかなと思うと凄く嬉しかった

「全然待ってないし大丈夫だよ!」そう言って瑠輝の手を引いて改札に向かう


水族館までは結構距離があるから電車で過ごす時間が長い。瑠輝が退屈してるんじゃないかと心配していたけど瑠輝は外の景色を見ながらニコニコしていた。


初めて会った時に綺麗な景色を見るのが好きと言っていた事を思い出した。楽しそうな瑠輝の横顔を見つめていると不意に瑠輝と目が合った。

見つめ合う2人。電車の中だということも忘れて触れるだけのキスをする。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る