第6話
月日は流れて6月になった。5月9日に誕生日を迎えて19歳になった俺は瑠輝に気持ちを伝えられないまま、ただ時だけが流れていた。那月と千春は5月に付き合い始めたらしい。
瑠輝とはLINEでやりとりをして前よりは仲良くなれているけど告白する勇気は出なかった。そんな俺を励ましてくれたのは那月だ。
「大丈夫だって。お前は今まで沢山の女の子と付き合ってきたんだし同じようにすれば絶対大丈夫!俺が保証するから勇気出せよ。のんびりしてたら瑠輝ちゃん誰かに取られるかもしれねーぞ」
那月の言葉を聞いてハッとする。瑠輝が誰かに取られるなんて想像するだけで不快だった。
3限目の講義は上の空で自分が何をしていたか記憶がない。気付いたら家のベッドの上にいた。いつの間にか眠っていたらしい。スマホで時間を確認する。
「22時か。瑠輝ちゃん起きてるかな」
ふと瑠輝の事を考えて、昼間那月に言われた事を思い出した。
スマホを手に取りLINEを開く。
『瑠輝ちゃん。ちょっと話あるんだけど起きてる?』
既読がつくまでの間も返事が返ってくるまでの間も待てないくらい好きが溢れていた。
人を好きになるって理屈じゃないんだな。そんな事を考えていると通知音が鳴った
『起きてるよ。改まってどうしたの?』
返事が返ってきた。ただそれだけなのに飛び上がるくらい嬉しくて。
早く返事を返したい気持ちはあるのに好きの2文字がなかなか打てない。
スマホと睨めっこして文字を打っては消してを繰り返し時間だけが流れていく。
どれくらい時間が経っただろう。
『すき』
たった2文字だけ。それも変換も出来ないまま送ってしまった。すぐに既読がつく。
返事が返ってくるのが待ち遠しいけど返事を聞くのが怖い。期待と不安が入り交じっていた。
ピロン。LINEの通知音が鳴った。恐る恐るスマホに手を伸ばす
『私も。初めて会った時からずっと、サキラくんが大好き』
それを見た俺は下の階には親がいる事も忘れ大声で叫ぶ。
『俺と付き合ってください』
『うん。改めてよろしくね』
2015年6月5日。俺と瑠輝が恋人になった日。
この時は本当に幸せで、まさか瑠輝と離れる日が来るなんて、俺は全く想像もしていなかった。
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