成人の儀式

 しばらくして奴隷たちを俺の近衛騎士団として正式に受理され、王国の貴族とかが集まって式典が開かれた。


 奴隷という立場は近衛騎士とし相応しくないので奴隷の身分を無くし、名誉騎士となり俺の部下として収まった。

 みんなガチガチに固まっていて面白かった。


 名誉騎士は下級貴族と同等ではあるが一代限りの身分である。

 俺の部下として何か武勲などを上げれば子供にも引き継げる騎士爵となれる。


 本当なら簡素な略式で俺の部下にするのだが、俺の毒殺未遂事件があり貴族同士の派閥で少し王国軽視が見られるとのことで王国としての権威を見せる為に態々式典を開いたそうだ。


 俺は凛として親父の隣に座っていたが、少しザワザワしてたのは俺の年が低いのとやはり俺の近衛騎士の年齢が低いからだろうな。


 式典を開くことで他国にも早く伝える側面もあるだろうが、俺としてはそう上手くいくだろうかと内心不安に思ってはいる。


 とはいえ、やることはあまり変わらない。


 子供たちも騎士になり、奴隷から解放したからなのか俺に忠誠を誓うと言ってくれた。

 アーシュには感謝されただけだ。

 彼に忠誠とか似合わないからそれで良いだろう。


 俺の近衛騎士団が設立した矢先に帝国と共和国から俺に謁見を求める手紙が届いた。

 明らかに式典が開かれる前に送ったであろう速さで届いた。


 手紙を送るだけで一ヶ月はかかるこの世界で式典数日で手紙が届くなどあり得ない。

 おそらくは貴族を招集した時点で手紙を書いて送り、無事に式典を終るのを確認してから届けたってことになる。


 手紙の内容は簡潔に言えば俺を一目見たいって事らしい。

 騎士団は手紙を送る口実に使われたな。


 これは親父に任せた。

 さすがに俺には分からん。


 親父に任せておけば最悪な事にはならだろう。


 俺は俺の出来ることをしようと思う。


「マスター。出力が強すぎて身体が付いて行けてませんね」


 現在、明晰夢で修練中である。


「魔力操作のレベルが低いからかな?」

「それもありますが、根本的に身体強化のレベルが低いからだと思われます」

「なるほどね。どっちも今後の課題だな~」

「それにしても随分とできることが増えましたね」

「そうだね。魔力操作は難しいけど、獲得できたのはデカいね」


《ステータス》

名前:ベルクリンデ・ルーファス・エルデール

・年齢 4才

・性別 男

・スキル

 【★★★★】健康体    (四)

 【★★★★】回復力増加  (六)

 【★★★★】魔力増加   (五)  +1

 【★★★★】明晰夢    (五)

 【★★★★】体感覚延長  (五)  +1

 【★★★★】魔力増加(コピー)(五)+1

 【★★】魔力操作  (一)     NEW

 【★】剣術     (四)     +1

 【★】毒耐性    (三)

 【★】身体強化   (一)     NEW

 【★】防御魔法   (一)     NEW

 【★】攻撃魔法   (一)     NEW


 1年以上頑張ってやっと魔力操作を手に入れる事ができた。


 獲得して分かったが魔力操作のランクは星2個だった。

 難しいはずだ。


 身体強化と防御魔法と攻撃魔法は魔力操作と一緒に手に入った。

 魔力操作を入手しないとこの3つは獲得できないのだと思う。


 生誕や成人の儀式などで入手してしまった場合を除いてこれらの魔力を使う系のスキルは魔力操作が必須だと思う。


 俺の体感覚延長のスキルも魔力操作を持っているのと持っていないのとでは操作性と効果が大きく変わった。


 これまでは毎回1秒を10秒程度に延長するしかできなかった。

 魔力もかなり消費していた。


 だが、魔力操作を得てからは秒数を操ることができるようになった。

 魔力の消費によって効果を変えることが可能になった。


 魔力を膨大に使えば1秒を30秒程度まで引き延ばすことができる。

 ただし伸ばすことができるのは意識のみで俺の身体はその時間に対応できない。


 なので身体強化を平行に使うことで解決しようと模索している。


「同時に使うのはまだ無理そうだな」

「少しずつですね」

「そうだな」


 明晰夢のレベルが上がって時間加速が上がればよりいろいろできるんだけどな~。


「時間加速は無理そう?」

「今のレベルでは無理そうです」

「そうか」

「私の方で明晰夢のレベルを上げる作業をしていますのでそのうち上がるでしょう」

「ポピーって本当に優秀だよね」

「ほ、褒めても何もでませんよ」


 そう言って照れる辺り可愛げがあるね。


「それにしても俺の成長速度が異常ってエルファスが言ってたけど、あの子たちを見てるとそれも理解できるね」

「子供たちですね?」

「うん」


 ちゃんとした食事をするようになって年少組と幼児組の身体が健康体になったので稽古が始まった。


 教えているのは親父や母さんではなくエルファスが面倒を見てくれている。


 俺が親父と稽古してる時に端で剣の基礎を教えていが、まだ1ヶ月も経っていないので素人に毛が生えた程度だ。


「マスターには明晰夢がありますから仕方ありません」

「そうなんだよね。あの子たちにも明晰夢を使わせたりできたら良いのにね」


 スキルを持っていないからそれは無理だけど、どうにか効率の良い稽古をさせるしかないかな?


「どうしたの? ポピー?」

「あ、いえ。何でもありません」

「そう?」


 何か考えてる感じだったけど、まぁいいか。


 さてと稽古を続けようか。


「魔法ってイメージが重要なんだよね?」

「そうです。イメージと魔力と反復ですね」

「なら空間魔法とか物を浮かせたりとかも出来るかな?」

「可能か不可能かで言えば可能だと思いますが、現実的には不可能ではないでしょうか」

「それは何で?」

「イメージができないからです。あまりにも突拍子もない事だと無理があります」


 やっぱりそうだよね。

 イメージが需要ってことは曖昧だといくらやっても無意味だ。


 空間のイメージとか良く分からないし、前世でのアニメとかに引っ張られてるけどアレが正解かどうかも定かではない。

 派手になるようにしてあるし、良く分からないからそんな感じなのかな? って流してる自分もいるからな。


「この世界でイメージを固めたらどうかな?」

「というと?」

「この世界って平たく言えば何でも可能な世界だよね?」

「そうですね」

「ならこの世界で空間魔法とかを使えば現実世界でもできると思わない?」

「夢でいくら空を飛んでも現実世界では空は飛べませんよ?」

「いや、まぁそうなんだけどね」


 無理があったかな?


「ですが、悪くはないと思います。少なくともイメージは掴めると思います」

「おぉ! ならそれもやっていこうか」

「そうですね」


 目指せ、レテポートかゲートかアイテムボックス!

 現実で空を飛んでみたいでござる!


――――――


 そんなこんなをしながら日々は過ぎ、あっという間に成人の儀式がやってきた。


「主様。もし高スキルが出なくても捨てないでください!」

「スキルが無くても頑張ります!」

「私はなんでもします!」


 3人が泣き崩れて俺に懇願している。

 もうここ1週間はこんな感じだ。


 誰かが3人に言ったのだろう。

 別に口止めをしてたわけじゃないから叱ることも言った人を探すこともしないけど、3人には無駄な心労をかけてしまって申し訳ない気持ちで一杯だ。


「大丈夫だ、3人とも。別に高スキルが出ても出なくても僕の部下であることに変わりはない。安心して儀式に望め!」

「「「主様~」」」


 よしよし。

 背が低くて狭い胸だが好きなだけ泣くが良い。


「そろそろ時間です」


 エルファスが3人を成人の儀式の部屋に連れて行こうとする。


「気にせず行ってこい」

「はい」

「分かりました」

「頑張ります」


 そう言って部屋を出ていったエルファスと3人。

 キルケーラの『頑張ります』はなにを頑張るのだろう?


 俺は3人が儀式を終えるまで部屋でゆっくりとして待った。


 30分ほどして勢い良くドアが開かれた。


「主様!! 高スキルを得る事ができました!!」

主様のお力なのですね!!

「頑張りました!!」

「おお!! 良かったな、お前たち!!」


 俺も心配していたから3人の笑顔を見ることができてとても嬉しい。

 一緒に喜びを分かち合う。


「3人とも。エルデール様が休まわれてる部屋に勢いよく入るとは何事ですか」

「すいません!」

「ごめんなさい!」

「ヒャイ!?」


 エルファスが怖い顔をして入ってきた。

 3人とも先ほどの顔がウソのように真っ青な顔をしている。


「やり直そうか」

「「「はい」」」


 一度出てもう一度入る。

 めんどくさいがこれも大切なことだ。


「エルデール様は甘いです」

「周りが怖いと俺ぐらいは優しくないとね」

「……」


 嫌われ役を私がすることになんの不満も無いんですか?

 って顔をされるが知らないフリをしよう。


「それじゃ3人ともどんなスキルが手に入ったんだい?」


 最初はガインだ。


「はい。俺は【覇道】というスキルでランクは4です」

「ランク4!? 凄いじゃないか!」

「ありがとうございます!」


 ガインは今にも泣き出しそうだ。

 もらい泣きしそうだから泣かないでほしい。


「効果は分かるか?」

「えっと。『自身の心の強さだけ強くなる』と書いてあります」

「ガインは既に星2の【鉄心】を持ってるから【覇道】と上手く噛み合ったな」

「はい! よがっだ……ほんどうに……」


 とうとう泣き出してしまったな。


「次はダビデールだな」

「はい! 僕はランク3のスキルを3つ獲得しました!」

「3つもか! 凄いな!」

「ありがとうございます! スキルは【剛弓】と【ポイント】と【一点集中】

です」

「なるほど、元々持っていた【鷹目】を使って弓で遠距離攻撃が可能になったな!」

「はい!」


【剛弓】

・通常の人では引くことのできない弓を扱うことができる。

【ポイント】

・指定した箇所に攻撃が誘導される。

【一点集中】

・力を一点に集中させ貫通力を上げる。


 効果はこんな感じらしい。

 どれも良いスキルだ。


「キルケーラはどんなスキルだったんだ?」

「はい! 私は【魔力増加】と【魔力回復】と【治癒魔法】を覚えました!」

「え?」


 魔力増加って俺と一緒じゃん!?


「ランクは?」

「全部4です! 頑張りました!」

「そ、そうか。が、頑張ったな」

「はい!」


 可愛い笑顔をしているが、俺とエルファスを含む4人はドン引きだ。

 まさかの星4スキルを3つも得るとは。


【魔力増加】

・魔力の上昇が発生したさいに+の補正がかかる。

【魔力回復】

・魔力の回復が早くなる。

【治癒魔法】

・外傷・内傷・状態異常を回復させることができる。


 更にキルケーラは元々持っていた【効率化】のスキルを持っているから平行して使用できれば魔力を必要最小限に抑えて使用できるようになる。

 恐ろしい子だ。


「え、エルデール様はこうなるとご存知だったのですか?」


 表情の優れないエルファスが俺に尋ねる。


「えっと。いや、予想外かな」

「そうですか」

「あぁ」


 後でポピーに問い詰めよう。


「キルケーラのスキルが教会に伝わったら取り込こうと大変なことになりますよ」

「お父さまに伝えといて」

「嫌ですよ!? エルデール様が伝えてください!」

「怒られるじゃん!」

「私も怒られるの嫌です!」

「分かった。なら一緒に行こう」

「……そうですね。3人の連れて行きましょう」

「説明するためには必要か」


 親父が冷静である事を願うばかりだ。


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