SS ポピー
『私の世界は無限に広がっている。
けれど淡く儚い夢の存在。
マスターであるエルデール様の明晰夢のスキルによって生まれた私の存在は現実的な質量を持たず、現実の世界に私は決して行くことは出来ない。
でもそれで良い。
私はこの世界が好きだ。
マスターも好き。
私はこの世界ではなににでもなれ、なんでもできる。
お花を創造し囲まれながらマスターが来てくれる夜を心待ちにする。
私はマスターと共に生きていく。
傍らではなく安らぎの中で』
「何やってんの? 手紙?」
マスターが呆れた顔を見ています。
「邪魔しないでください」
「それ、誰に見せるの?」
「特に見せる予定はありません」
「……え?」
「マスターには理解できないポエムと言うやつです」
「理解できない言うな。でもポピーってそういうの書くんだね。意外かな?」
「既に飽きてきましたけど」
「君の存在を俺はまだ理解できてないかも」
「私は私ですよ、マスター」
「うん、まぁそうだね」
話もそこそこに剣を振り始めました。
最近は修行を一生懸命に頑張っています。
毒で倒れた日を境にマスターの中で何かが変わったのでしょうね。
私もその影響を受けました。
以前の私はマスターの無意識を切り取られ、明晰夢のスキルが意識を与えた存在だったのです。
つまり私はマスターと同じ人格だったのです。
まぁ少々違うのは明晰夢スキルの一部と融合してしまったからなんでしょうね。
それが以前の私です。
ですが今は個の人格を有しています。
これはマスターの意識が依然と変わったことを意味します。
以前のマスターは前世の延長線で日々を生きていました。
多少の記憶があるので仕方ないとは思いますが、どこか今を見ていないような感じでした。
事件を経てマスターは前世の自分を割り切ったのでしょう。
そしてエルデール様として生きることにした。
私は前世のマスターの大部分を吸収してしまいました。
そして一人のポピーとなりました。
不思議な感覚です。
以前はマスターとの感覚的なパスを感じていたのですが、今はそれがありません。
孤独というか孤立というか個体というか個人というか。
私が私だと思えます。
「ポピーって悩みとかあるの?」
マスターが木剣を振りながら質問をしてきました。
「悩みですか?」
「うん。あるの?」
「あるにはありますね」
「俺に相談とかしても良いよ」
「え? あ、いえ、マスターに相談したら……悲しませてしまいます」
「俺が悲しむ悩みなの? え? 俺、何かした? 気に障ることしたなら謝るよ!?」
「マスターはどうかそのままで。相談はそのうちさせて頂きます」
「わ、分かった。どんな相談内容か不安だな……」
私にも悩みはあります。
悩みと言えば悩みなのですが、どちらかと言うと戸惑いですかね?
戸惑いの原因は……私にスキルが与えられました。
いや~ビックリです。
【ステータス】
名前:ポピー
スキル
・【★★★★★】心象世界
・【★★★★★】現実世界
・【★★★★】
・【★★★★】
・【★★★】子守歌
・【★★★】応援歌
いや~ビックリですよね。
マスターにも無い星5のスキルが2つもあるなんて~。
いや~これは参りました~。
これをお伝えしたらマスターがショックを受けると思われるので、面白い……もとい重要な場面でお伝えしなければ。
どんな反応をするか楽しみですね。
「ポピー。少し手合わせしてくれないか?」
「はい、喜んで」
スキル【
「行くぞ」
「あぁ」
【
・見た相手の姿・形に変われる。
【
・見た相手の動きを模倣・模写することができる。
問題があるとすればこの【
このスキルに星5があった場合は記憶なども引き継がれ、完全な現身になるのでしょう。
やはり星5は規模の規格は大きいのですが使う場面が早々あるとは思えませんね。
便利で扱いやすいのは星3~4ぐらいなのでしょう。
これもマスターは知らない事でしょうね。
マスターは星4しか所持していませし、他は星1。
フフフッ……。
比べて比較するには性能の差があり過ぎます。
私はあくまでマスターの補助をするのが役目。
危険がなければ私の出る幕はありませんからね。
まぁマスターが強くなってくれればめんどくさい……ゴホン。
大変なことはマスターがやってくれるでしょうから、手心を加えずに厳しく行きましょう。
「まだまだ甘いわ!」
「ポピー! お前、俺を殺す気か!」
私は夢の住人。
この世界で私は最強の存在です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます